血管のしくみとはたらき
『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は血管のしくみとはたらきについて解説します。
中嶋ひとみ
新東京病院看護部
〈目次〉
全身の血管
動脈とは、心臓から出る血管で、心臓が拍出した血液が流れます。
静脈とは、心臓に入る血管で、各組織から心臓に戻る血液が流れます。
毛細血管は、動脈と静脈の間をつなぎ、細胞との間で酸素と栄養、二酸化炭素と老廃物を交換します。
心臓から拍出された血液は、動脈→毛細血管→静脈の順で流れます。
血管のしくみ
血液の通り道である血管は、それぞれ特徴をもっています。
血管の壁は毛細血管を除き、内膜、中膜、外膜の3層構造になっています。それぞれの血管壁は内皮細胞で覆われています。
動脈のしくみ
動脈には多量の弾性線維があります。
大動脈や心臓に近い太い動脈を弾性動脈、末梢にある中型の動脈を筋性動脈、その先は細動脈、毛細血管といいます。
▷弾性動脈:平滑筋より弾性線維のほうが多く、その豊富な弾性線維により、血管を伸展、収縮し血圧を調整します。
▷筋性動脈:中膜はおもに平滑筋でできており、平滑筋の収縮・弛緩により、血管腔の広さを変えて血流を調節します。
▷細動脈:細動脈は末梢血管抵抗の主体となるため抵抗血管と呼ばれ、交感神経が興奮すると伝達物質のノルアドレナリンが平滑筋に作用して血管を収縮させ、血管抵抗が増大(血圧が上昇)します。
静脈のしくみ
静脈は動脈に比べ、中膜が多く弾性線維も少ないです。そのため、やわらかく伸展しやすく、血液を貯留しやすいことから容量血管と呼ばれています。
内膜が折り返ってできた静脈弁があり、血液の逆流を防ぎ、骨格筋の収縮弛緩で血液が心臓へ向かって流れるのを助けます(図2)。
毛細血管のしくみ
毛細血管は、各臓器、組織内で網目状の血管系をはりめぐらせ、動脈系と静脈系をつないでいます。
毛細血管では、壁を通して血管と組織間の物質供給と老廃物の回収を行っています(図3)。
血管吻合と終動脈
毛細血管に至る前の部分では、細動脈どうしの交通があります。これを血管吻合(けっかんふんごう)といいます。動脈では、吻合によって互いに交通連絡しているため、ある場所に閉塞が生じて循環障害が生じても、ほかの血管の吻合枝から血液を維持することができます。これらを側副血行路といいます。
毛細血管に至る前の細動脈に吻合をもたない動脈を、終動脈といいます。冠動脈などが代表で、終動脈が閉塞すると血行が遮断され、梗塞が生じます。これが心筋梗塞です(図4)。
文献
- 1)医療情報科学研究所編:病気がみえる vol.2 循環器 第4版.メディックメディア,東京,2017:2-29.
- 2)稲田英一,医療情報科学研究所:イメカラ 循環器 ̶イメージするカラダのしくみ.メディックメディア,東京,2010:2-19.
- 3)堀正二監修,坂田泰史編:図解 循環器用語ハンドブック 第3版.メディカルレビュー社,東京,2015.
- 4)小澤瀞司,福田康一郎監修,本間研一,大森治紀,大橋俊夫 他 編:標準生理学 第8版.医学書院,東京,2014:632-654.
- 5)坂井建雄,河原克雅編:カラー図解 人体の正常構造と機能 【全10巻縮刷版】 第3版.日本医事新報社,東京,2017:82-107.
- 6)増田敦子編著:身体のしくみとはたらき̶楽しく学ぶ解剖生理.サイオ出版,東京,2015.
- 7)大谷修,堀尾嘉幸:カラー図解 人体の正常構造と機能 第2巻 循環器 第3版.日本医事新報社,東京,2017:82-107.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社