ETCO2って、なに?|カプノグラムの正常・異常波形
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「ETCO2」に関するQ&Aです。
尾野敏明
杏林大学医学部付属看護専門学校非常勤講師
ETCO2って、なに?
ETCO2とは、呼気終末期(end-tidal/エンドダイタル)の呼気中CO2分圧で、「換気を行えているか」を評価する指標となります。正常な換気状態であれば、ETCO2≒肺胞内CO2分圧(PACO2)となります。
〈目次〉
ETCO2
ETCO2 は、カプノメータで測定され、主に換気が行えているかどうかを評価するものである。
ETCO2の値は、PACO2 とほぼ近似するが、通常2〜5Torr程度低い。PACO2とETCO2の差が大きくなる場合には、死腔換気やシャントの増加が考えられる。
ETCO2は呼吸・循環・代謝の影響を受けるため、他の因子の評価も同時に行う必要がある。
カプノグラム
ETCO2の経時的な変化を曲線で表したものをカプノグラムという。正常なカプノグラムは4相から構成される(図1)。
- 第Ⅰ相:吸気の最後から呼気の初期で(図1:A-B)、解剖学的死腔(気管チューブや気管・気管支など)のガスが呼出される。そのため、CO2濃度は0Torrである。
- 第Ⅱ相:肺胞からCO2を含んだガスが排出されるため(図1:B-C)、呼気中のCO2濃度が急激に上昇する。
- 第Ⅲ相:肺胞からのガスが排出されているため、わずかに右肩上がりのほぼ平坦な波形になる(図1:C-D)。この相の最後がETCO2である。
- 第Ⅳ相:吸気が開始され、CO2濃度が低下して基線(0Torr)まで戻る(図1:D-E)。
カプノグラムの異常波形
1Ⅱ相の遅れとⅢ相の傾きの急峻化
すみやかに呼気ガスが呼出することができなくなっている状態である。
気管チューブの不完全閉塞などでも出現する。
2第Ⅲ相の2峰性化・多峰性化
人工呼吸管理中、第Ⅲ相に凹部がみられ、2峰性化や多峰性化が認められた場合は、呼気中に吸気が現れたことを意味する。鎮静深度の確認などが必要である。
自発呼吸下での管理では、喀痰量の増加により、このような波形を呈することがある。
3第Ⅲ相プラトーの消失
第Ⅲ相でのプラトーが消失し、吸気相である第Ⅳ相に入っても傾斜を認める場合は、何らかのガス漏れ(リーク)があることを示唆する。
カフ漏れの有無、呼吸器回路の確認が必要である。
略語
- ETCO2(end-tidal carbon dioxide tension):呼気終末二酸化炭素分圧
- PACO2(alveolar carbon dioxide tension):肺胞気二酸化炭素分圧(肺胞内CO2分圧)
[文献]
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社