大脳皮質の機能|神経系の機能

看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。

 

[前回の内容]

中枢神経系

 

今回は、大脳皮質の機能について解説します。

 

片野由美
山形大学医学部名誉教授
松本 裕
東海大学医学部看護学科講師

 

Summary

  • 1 .大脳皮質は機能の違いにより、一次的な働きを受けもつ一次野と、より高度な機能を受けもつ連合野に分けられる。
  • 2 .連合野は、さまざまな異なる情報を統合し、判断、記憶するとともに、その情報に応じて適切な指令を出す高度な機能を営む。
  • 3 .前頭葉は一次運動野ともよばれ、運動機能や自律機能、精神に関係する連合野でもある。頭頂葉は一次体性感覚野ともよばれ、体性感覚の連合野でもある。側頭葉は一次聴覚野ともよばれ、聴覚の連合野でもある。後頭葉は一次視覚野ともよばれ、視覚に関係する連合野でもある。

 

〈目次〉

 

大脳皮質の機能的区分

皮質にはいろいろな領野があり、それぞれ違った機能を受けもっている(機能的局在)。大脳皮質は、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉に分けられるが、さらに情報を識別してそれに応じた指令を出すといった一次的な働きを受けもつ一次野と、より高度な機能を受けもつ連合野に分けられる(表1)。

 

表1(神経)大脳半球の機能的区分

(神経)大脳半球の機能的区分

 

一次野と連合野

一次的な働きを受けもつ一次野には、運動にかかわる運動野、皮膚筋肉、関節などの感覚にかかわる体性感覚野聴覚野嗅覚野味覚野視覚野などがある(図1)。

 

図1大脳皮質の感覚野・運動野

大脳皮質の感覚野・運動野

 

連合野は、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚などの入力情報を統合し、「それが何か(側頭連合野)」・「どこにあるか(頭頂連合野)」を判断したうえで、「何をすべきか(前頭連合野)」を判断している。

 

感覚器からの情報に対し、随意運動によって適切な対処行動をとるには、前頭葉をはじめとする4つの葉が連動して機能する必要があり、連合野はこれらの高度な機能を営むうえで不可欠な役割を果たす。

 

例えば自動車が目の前に迫っている視覚野でとらえられたとしても、それが危険であることを認識できなければ、逃げることなくひかれてしまう。

 

連合野では、このように視覚として入った情報を他の領域の情報や過去の記憶などから「危険である」と判断して、逃げるよう指令を出す。

 

ブロードマンの機能的区分

大脳皮質の細かい機能的区分法には他にブロードマン(Brodmann)の区分がある。大脳皮質は表面に平行な6層からできている。ブロードマンは、大脳皮質の部位を脳溝や脳回によらないで、細胞層の構成の違いによって区別できるという見方から、大脳皮質を52の領野に分けた。

 

前頭葉

一次運動野をもつ。運動機能や自律機能に関係する。精神の座で、意志や意欲、創造、思考、感情の連合野でもある。この領野の一部(ブロードマン44野)にブローカの運動性言語中枢があり、この部位を損傷すると、問いかけの意味を理解できるし発声筋にも異常がないのに答えをいうことができなくなる。これを運動性失語症という。言語中枢はほとんどの場合、左半球にある。

 

頭頂葉

一次体性感覚野ともよばれる。皮膚、深部感覚などの体性感覚や味覚に関係するが、頭頂葉の連合野は知覚および空間の認知に基づく思考に関する統合を行っている。すなわち体性感覚野、味覚野、聴覚野、視覚野などからの感覚情報が記憶され、あるいはすでに記憶されていたものと照合して、それが何であるかを認知し、理解し、判断する。その結果、知識が形成され、知能が高められていく。

 

側頭葉

一次聴覚野をもつ。聴覚の連合野でもある。この領野の一部(ブロードマン22野)にウェルニッケ(Wernicke)の聴覚性言語中枢があり、この部位を切除しても聾(ろう)にはならないが、言語の認知ができなくなる。この場合、問いかけられても意味が分からないため答えない。これを精神聾または感覚性失語症という。

 

後頭葉

一次視覚野をもつ。視覚に関係している連合野でもある。この領野の一部(ブロードマン18野)が損傷すると、目は見えるが空間認知や文字の意味の認知ができなくなる。この状態を、精神盲または読字不能症という。

 

※編集部注※

当記事は、2016年5月1日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。

 

[次回]

脳幹の機能(1)

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版

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