看護職の5人に1人は「准看護師」|ダイバーシティ時代に選ばれる職業?


厚生労働省医政局看護課調べによると、准看護師の就業者数は約34万人に上ります。

看護師は約121万人ですので、看護職の5人に1人が准看護師ということになります。

 

看護教育の考え方の変化などで准看護師養成校は年々減少傾向にありますが、現在も全国各地に約230校あり、2017年4月の入学者数は9000人を超えています。

また、准看護師試験の受験者数は2017年度で1万7000人を超えています。

 

日本准看護師連絡協議会のみなさんに、准看護師になる人の傾向やキャリアの築き方などについて聞いてみました。

 

 

さまざまな人が看護の世界へ踏み出す「入口」に

 

終身雇用が難しくなっている今、安定したイメージがある医療・介護関係の職業は人気があり、准看護師もその一つです。

 

准看護師は、

 

  • 中学校の卒業資格があれば養成校に入学できる
  • 最短で2年で免許が取得できる
  • 働きながら養成校に通うことができる(全日制:週3日程度、半日制〈平日の午後または夜間〉:週5日程度)
  • 複数の都道府県で准看護師試験の受験が可能で、合格率が97~98%と高い

 

などが特徴で、多様な人が目指すことができる看護職です。

 

養成校の入学生の最終学歴を見ても、多様な人を受け入れていることが分かります。

 

会長の滝田浩一さん(慈雲堂病院〈東京都練馬区〉)は、准看護師養成校に通う学生について次のように話します。

 

「病院で看護助手として働きながら資格を取得される方もおられますし、いったん社会に出た後、30歳を過ぎてから人生を見つめ直し、新しい仕事を探す中で准看護師を目指す方もおられます。実にさまざまです」

 

理事の北條文夫さん(吉祥寺病院〈東京都調布市〉)も、「本当に多様な学生がいますよ。私自身が養成校に通っていたころも、元自衛官やシングルマザーなど、いろいろな同級生がいました」と言います。

 

 

働きながら学べるメリットは、経済面だけじゃない

准看護師は、経済的な理由から医療機関で働きながら目指す人が多いといわれています。

 

実際、医師会立の学校では、医療機関で就労中の学生が半数近くを占めています。

 

 

実は、会長の滝田さんも、働きながら准看護師になった一人。

 

元々、父親の看病をしながら病院で看護助手をしていた滝田さんは、父親を看取った後、20代後半に働きながら准看護師養成校に通い、准看護師の資格を取得したそうです。

 

午前中は病院で働き、午後から養成校へ通っていた滝田さんは、学生時代の経験を次のように話します。

 

「日常的に患者さんと接することができる環境に身を置いていたことは大きな利点でした。教科書から得る知識だけでなく、医師や看護師の会話を聞いたり、ケアをする様子を間近で見たりしたことで、知識と実践をつなげて考えることができ、非常に勉強になりました

 

また、患者さんが何気なくかけてくれた言葉が、大変ながらも仕事と学業を両立するモチベーションの維持につながっていたと滝田さんは言います。

 

 

准看護師としてのキャリアの築き方

准看護師は多様な人が目指せる職業ではありますが、なりやすいからこそのデメリットもあります。

 

  • 看護師と教育内容が異なるため、知識・技術面を補うための卒後教育が欠かせない
  • 法律上、准看護師は自らの判断での看護業務はできない(保健師助産師看護師法第1章第6条
  • 役割の違いから、准看護師が管理職に就くことは難しい

 

知識やスキルは臨床で経験を積むことで解消される部分があるかもしれませんが、昇進したいと考える准看護師には将来ネックになります。

 

そういった観点から、准看護師のモチベーションを上げるために病院独自のポジションを設けているところもあるそうです。

 

副会長の苑田かすみさん(平川病院〈東京都八王子市〉)が勤務する病院では、「業務リーダー」という役職があります。

 

苑田さんもその一人で、看護助手の指導で中心的な役割を果たしており、「はっきりものが言える立場で働くことができている」と言います。

 

会長の滝田さんが勤務する病院でも、准看護師の職員をとりまとめる役割を担う「副主任」と呼ばれる役職があるそうです。

 

また、監事の原田俊樹さんが院長を務める病院(こころの医療たいようの丘ホスピタル〈岡山県高梁市〉)では、役職ではありませんが、委員会の委員長などを担ってもらうことがよくあり、「災害マニュアルの作成などで力を発揮してもらい、非常に助かっている」と言います。

 

准看護師のキャリアを築く方法は、働く病院によって違いがあるようです。

 

准看護師から看護師へのキャリアアップ

また、准看護師のキャリアアップの方法としては、看護師資格を取得する選択肢もあります。

 

具体的には、

 

  • 全日制または定時制の看護師養成校(最終学歴が中卒の場合は「実務経験3年以上」が必須)
  • 実務経験7年以上で、通信制の看護師養成校

 

のいずれかの教育課程を修了し、看護師の国家試験に受かれば、看護師長や主任など管理職に就くことが可能になります。

 

病院によっては、看護師資格を取得するサポートをしているところもあります。

 

理事の笠嶋晴子さん(新横浜リハビリテーション病院〈神奈川県横浜市〉)も、准看護師を経て看護師資格を取得した一人です。

 

病院の事務職だった笠嶋さんは、一番早く看護の仕事に就けることから、まず准看護師の資格を取得し、准看護師としての経験を積んだ後に看護師資格を取得したそうです。

 

笠嶋さんは、今では回復期の病院で看護部を率いる看護部長になっています。

 

つまり、准看護師からスタートしても、後から看護師の資格を取得することで、昇進の道を歩むことも可能であるということです。

 

 

人と接するのが好きな人に向いている

 

最後に、みなさんに准看護師の仕事の魅力を聞いてみました。

 

多かった意見が、患者さんとのかかわりの中で感じられる「やりがい」でした。

 

患者さんが回復して元気になっていくところに自分がかかわれることで喜びを感じたり、患者さんから掛けてもらった言葉が励みになったりしているそうです。

 

そのため、人と接することや、人にかかわることが好きな人に向いている職業ではないかとの声がありました。

 

***

 

団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる、いわゆる「2025年問題」に向け、看護職はまだまだ不足していると言われています。

 

これまで、看護職を目指す多様な人材の受け皿となってきた「准看護師」という職業。

 

“ダイバーシティ”(多様性)が重視される時代になった今、これからの動向が注目されます。

 

看護roo!編集部 坂本朝子(@st_kangoroo

 

 

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(参考)

これから准看護師を目指す人(日本准看護師連絡協議会)

平成30年医師会立助産師・看護師・准看護師学校養成所調査(日本医師会)

看護師、准看護師の就業者数日本看護協会

保健師助産師看護師法

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