点滴ルートの固定方法【2】|成人の手背に固定する場合
この連載では、点滴ルートの固定方法の多様なバリエーションと、それぞれの方法がOKなのかNGなのかをご紹介します。
Vol.2 成人の手背に固定する場合
〔執筆〕 白石弓夏 看護師
〔監修〕 中谷佳子
聖マリアンナ医科大学病院
感染制御部 副師長
〔イラスト〕 かげ 看護師
◆目次
点滴ルート固定ではずせないポイント
さまざまなバリエーションを見ていく前に、今回も、点滴ルート固定において最低限必要な条件をおさえていきます。
【点滴ルート固定に最低限必要な条件】
- 針とラインがしっかり固定される
- ラインが閉塞しない
- 刺入部の観察ができる
手背に固定する場合で、この条件をクリアできるのは、どんな方法でしょうか?
具体的に解説していきますね。
【OK】ループの固定が良い例
こちらが良い例です。
手背の場合には、「利き手を避け」「ルートが邪魔にならないように」固定するのが一番のポイントです。
利き手側は、どうしても動かすことが多くなります。
邪魔になるだけでなく、血管外漏出のリスクも増大するため、できるだけ避けましょう。
ルートを折り返す部分の浮きが大きいと、着替えの時などに衣服にひっかかり、患者さんにとってストレスになります。
邪魔にならないようにする工夫として、ループ部分が大きく浮かないように固定する方法があります。
また、ループの位置としては、体幹側ではなく、外側(小指)に流すと、歩くときに体幹に当たらなくて済みます。
針を刺す位置はかなり慎重に選ばなければいけないと思います。
なお、手背の場合は、刺入部の針とルートの接続部が骨に当たって痛みを感じることがあります。
そのため、ガーゼを挟むことが多いです。
【やむをえない場合はOK】中指から通すやり方
【表側】
【裏側】
できれば避けたいですが、中指から通すやり方もあります。
やむをえず、刺す位置が指の付け根側になってしまったり、ルートの材質が硬いもの(非吸着性タイプ)だと、ループが大きくなり引っかかりやすく危険です。
そこで、リスクを避けるために指にひっかけて、手のひら側に通します。
「絶対にNG」ということはないですが、手を洗うときなどに、邪魔になりやすい固定方法です。
実施の際には、最初に書かれている3つのポイントが守られるように固定しましょう。
【やむをえない場合はOK】親指から通すやり方
こちらも、刺入部が親指の付け根に近いときなど、やむをえない場合の方法です。
ルートを親指の付け根から、手のひら側へまわして固定します。
その際に、ドレッシング材に切り込みを入れると、よりフィットします。
【NG】ルートが大きく浮いてしまっている例
こちらはNG例です。
ループの部分が大きく浮いていて、引っかかりやすく危険です。
できるだけ浮きが少ないように固定しましょう。
【NG】接続部が折れてしまっている例
こちらもNG例です。
浮きを少なくしすぎると、このように接続部が折れ、閉塞気味になります。
また、ルートが引っ張られて、折れてしまう場合もあるので、引っ張られないように固定しておくことも重要です。
【参考】ネットやバンドで固定する方法
より確実に固定するためには、左のように包帯ネットで保護するタイプか、手首の怪我などで使用するバンドを使う方法もあります。
一番右のイラストのようなカバーも販売されています。
バンドをめくれば刺入部は見えるので、問題ありません。
これらの方法をとる場合は、圧迫しすぎないように装着することが重要です。
自分の施設のやり方に近いものはありましたか?
点滴ルートの固定には、何通りものやり方法があります。
それぞれのメリット・デメリット・禁忌を理解し、方法を選択していきましょう。
次回は、高齢者の場合のポイントをご紹介します。
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【監修者 プロフィール】
中谷 佳子(なかたに・よしこ)
1997年 聖マリアンナ医科大学病院 入職
2006年 川崎市立多摩病院(指定管理者 聖マリアンナ医科大学)へ異動
2008年 感染管理認定看護師 取得
2008年~ 感染対策専従看護師
2013年 東京医療保健大学大学院 医療保健学研究科 修了(感染制御学修士)
2019年 聖マリアンナ医科大学病院 へ異動
2019年~ 感染制御部 副師長
2019年9月 特定行為研修 修了
※最終更新日 2019/09/20
【イラスト:かげ】Twitter
総合病院で働き、絵を描く看護師です。医療の勉強に役立つ(てほしい)絵や仕事でのほっこり話などをTwitterでつぶやいています。
編集/坂本綾子(看護roo!編集部)
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