小児の経口与薬の手順

『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』(インターメディカ)より転載。一部改変。

今回は小児の経口与薬の手順について解説します。

 

 

山元恵子
富山福祉短期大学看護学科長

 

 

小児の経口与薬をスムーズに実施するには、発達に応じた説明を行うこと、服用しやすい形状に準備をすること、服用後に不快感を残さない工夫を行うことが必要である。

 

小児の経口与薬の工夫

服用前

  • 1発達に応じた説明を行う。
  • 2薬袋や現物を見せ、触れさせて、不安感をやわらげる。

 

服用時

  • 3患児の好みに応じた薬の形状で準備する。
     オブラートやカプセルなどに入れる。
  • 41回の服用量が最小限になるよう、形状を工夫する。
  • 5少量の水に溶かしてスプーンやスポイト、注入器で流し込む。
  • 6少量の水で練ってペースト状にし、口の中に塗る。
  • 7少量のプリン、ゼリーなどに混ぜる。
  • 8少量の飲み物に溶かして凍らせ、口に含ませる。
  • 9スプーンの上で、散剤をチョコレートクリームやジャムでサンドイッチ状にはさむ。
  • 10市販の服用ゼリー(いちご味など)を活用する。
  • 11少量の飲み物に溶かしてシャーベット状にする。
  • 12授乳や食事の前に服用させ、吸啜力・食欲を期待する。

 

服用後

  • 13服用後はうがいをしたり、好きな飲み物をとり、不快感が残らないようにする。
  • 14服用後はガムをかんだり、歯磨きをして口腔の清浄感を保つ。
  • 15服用後は十分にほめ、シールを貼るなどがんばりの継続を動機付ける。
  • 16服用後は遊んだり、あやしたりして、気分転換を図る。

 

 

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経口与薬の目的

● 指示された薬剤を確実に、安全に体内に吸収させ、期待される薬剤の効果を得る。

 

 

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経口与薬の種類

● 散剤・液剤・錠剤・カプセル

 

 

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小児の経口与薬の手順

1 必要物品の準備

経口与薬に必要な物品は図1のとおり。

 

図1 経口与薬の必要物品

経口与薬の必要物品

 

①指示箋
②薬杯 
③微温湯
④スプーン
⑤注入器
⑥スポイト
⑦乳首

 

POINT

■服用方法は、ベッドサイドで患児の好むものを選択する。
■患児のお気に入りのスプーンや、こだわりの物を用意しておくとよい。

 

 

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2 指示箋と薬剤の照合

指示箋と薬袋を指差し確認を行って照合(図2)。患者氏名・薬剤名・薬剤量・与薬方法・与薬時間・与薬目的に誤りのないことを確認する。

 

図2 指示箋と薬剤の照合

指示箋と薬剤の照合

 

POINT

■自分で名前を言えない患児の場合は、家族に確認したり、ネームバンドと照合する。
■与薬時には、6Rを確認する。
  Right patient:正しい患者氏名
  Right drug:正しい薬剤名
  Right dose:正しい薬剤量
  Right route:正しい与薬方法
  Right time:正しい時間
  Right purpose:正しい目的

 

 

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3 経口与薬の実施(散剤の場合)

❶薬杯に指示量の散剤を入れ、注入器に少量の微温湯を吸引する(図3)。

 

図3 薬杯に散剤を入れ注入器に微温湯を吸引

薬杯に散剤を入れ注入器に微温湯を吸引

 

❷微温湯を散剤に注入し、静かにかき混ぜて均一に溶かす(図4)。

 

図4 微温湯を散剤に注入

微温湯を散剤に注入

 

POINT

■微温湯は、患児が飲める量を用いる。
■塊が残らないよう、均一に溶かす。

 

❸微温湯で溶かした散剤を注入器に吸引する(図5)。

 

図5 微温湯で溶かした散剤を注入器に吸引

微温湯で溶かした散剤を注入器に吸引

 

 

CHECK!

水剤は、目線を平行にして計測

●水剤は、薬杯に指示量を計測して用いる。この際、水面と目線を平行にして、正確に計測する(図6)。
●薬理作用の影響を大きく受けやすい小児では、薬剤量を正確に計測することが大切である。

 

図6 目線を平行にして計測する

目線を平行にして計測する

 

 

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注入器による与薬

患児を坐位にする。乳幼児の場合は、看護師または母親が抱っこをする。患児の体動が激しい場合は、バスタオルでくるむ。

 

注入器に指示量の薬を入れ、患児の口角から、誤嚥しないようゆっくりと注入(図7)。患児と視線を合わせ、あやしたり、声をかけながら、実施する。

 

図7 注入器による与薬

注入器による与薬

 

POINT

■注入器・スポイトは、口角から挿入する。
■発達に応じて、患児に服用方法の確認を行う。

 

スポイトによる与薬

スポイトに薬を入れ、患児の口角から注入する(図8)。

 

図8 スポイトによる与薬

スポイトによる与薬

 

POINT

■スポイトを強く押しすぎて、一度に薬液を流し込まないよう注意。
■誤嚥しないよう、静かに、ゆっくりと流し込む。

 

スプーンによる与薬

スプーンが使える患児の場合は、スプーンで与えることもできる(図9)。

 

図9 スプーンによる与薬

スプーンによる与薬

 

乳首と注入器による与薬

乳首をくわえさせ、注入器で薬液を注入して、吸啜させる(図10)。患児と視線を合わせ、あやしたり、声をかけながら、実施する。

 

図10 乳首と注入器による与薬

乳首と注入器による与薬

 

POINT

■泣いている時には、飲ませない。
■哺乳前・離乳食前に与えると飲ませやすい。

 

 

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小児の経口与薬Q&A

薬剤をミルクに混ぜて与えてよい?

薬剤をミルクに混ぜて与えると、ミルク嫌いになる場合がある。
授乳時、薬剤を少量の水で溶いて飲ませてから、ミルクを飲ませるとよい。

 

苦い薬にシロップやはちみつを混ぜ与えてよい?

香料を加えてもよいが、薬によっては苦味を増すため注意する。
はちみつについては「小児ボツリヌス症」を発症する場合があるため、1 歳未満の小児への使用は避ける。

 

グレープフルーツジュースと一緒に飲ませてもよい?

グレープフルーツジュースは、薬剤によっては吸収を妨げ、血中濃度を増大させる働きがある。薬理効果が期待できなくなる場合があるため、薬剤とともに飲むことは避ける。

 

 

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本連載は株式会社インターメディカの提供により掲載しています。
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[出典] 『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』 監修 山元恵子/編著 佐々木祥子/2022年7月刊行/ インターメディカ

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