家族とのコミュニケーション
『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』(インターメディカ)より転載。一部改変。
今回は家族とのコミュニケーションについて解説します。
山元恵子
富山福祉短期大学看護学科長
佐々木祥子
東京都看護協会/小児看護専門看護師
家族とのコミュニケーション
家族との十分なコミュニケーションは、患児との信頼関係を築き、普段の生活情報を収集するために、必要不可欠なものである。
看護師には、患児のみでなく家族への配慮、援助を行うことが求められている。
看護師が患児の家族と接する際、もっとも求められるのは、「家族を責めない」「子どもが病気になったことを非難しない」態度である。
家族は、「患児の事故や病気の原因が自分にあるのではないか」と心のうちで自分を責めている場合が多い。受診の際、「なぜ、もっと早く連れてこなかったの?」などの問いかけが家族の心を傷つけ、医療者に心を閉ざすきっかけとなる。
「よく気がつきましたね」などと対応をほめ、認めることが、家族の心を開き、信頼関係につながる。
「小児看護領域で特に留意すべき子どもの権利と必要な看護行為」(日本看護協会 1999年)では、「家族からの分離の禁止」が明記されている。やむをえず、患児を家族から離す際は、十分に説明し、理解と同意を得る必要がある。
また、不安や恐怖の気持ちを受容し、苦痛が最小限となるよう援助する。
家族へのかかわり
●普段の生活情報を収集。
●やむをえず患児と分離するときは、十分に説明。
●患児の事故や疾病に対する自責の念を和らげる。
●経済的負担へのアドバイス。
●医師の説明を補足。
処置に家族を同席させる? させない?
処置時に家族を同席させることについては、子どもの権利を尊重する上で認める必要がある。
しかし、医師が家族の同席を好まないことがあるなど理想と現実のギャップがある。
近年では、処置時に家族を同席させて処置を行うためのさまざまな取り組みが報告されており、処置時の同席は保障されつつある。
仮に家族が同席を拒む場合があっても、子どもが望む方法で処置が受けられるように支援する必要がある。
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コミュニケーション障害のプロセス
小児は親にとってかけがえのない存在であり、医療者のささいな行動・言動が不満へとつながる(図1)。
小児・家族・医療者が一体となって、信頼感の中で医療を行うことが、コミュニケーション障害を防ぐ鍵である。
図1 コミュニケーション障害のプロセス
万が一、患児が重篤化した場合は、次のように対応する。
1.患児と家族の対面の場を設ける。
2.両親ともに(1人ではなく)同席のうえ、説明を行う。
3.現状をわかりやすい言葉で説明する。
4.必ず、正確な時間とともに記録を残す。
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本連載は株式会社インターメディカの提供により掲載しています。
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[出典] 『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』 監修 山元恵子/編著 佐々木祥子/2022年7月刊行/ インターメディカ