虐待
『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』(インターメディカ)より転載。一部改変。
今回は小児の虐待について解説します。
風間 敏子
元 難病子ども支援全国ネットワーク電話相談室
虐待
虐待は身体的虐待、ネグレクト(育児放棄)、性的虐待、心理的虐待に分類される。
受傷状況や親の説明が不自然な場合、基礎疾患がなく発育障害がみられる場合、受診が遅れている場合などは、虐待を疑う必要がある。
❶看護師は家族の様子を観察し、患児と家族への配慮をもって接し、正確な情報を記録する。
❷家族に対しては、責めたり、虐待を疑うような態度ではなく、「よく連れてきてくれたね」「心配だったね」「話してくれてありがとう」と受容し共感する姿勢で接する。
❸患児に対しては、家族をかばう気持ちを察し、家族から離れた場所で徐々に気持ちを聞きだす。
❹医療者間(医師、看護師、ソーシャルワーカー)で連携をとる。帰宅する場合は、次回の外来予定日を設定する。
観察ポイント
・栄養障害(皮膚の弾力性、かさつきなど)。
・不衛生(衣服や身体の汚れ)。
・季節や外気温に合わない衣服。
・不自然な外傷。
情報収集
・詳細な臨床所見と記録。
・身体的所見を写真撮影。
・受傷状況を詳細に記録。
・虐待の疑いをにおわさず、純粋に情報収集する。
・患児は家族とは別に問診。
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虐待の初期対応
1 情報収集
・できるだけ詳細な臨床所見の検索と記録を行う。
・身体的所見は写真を撮る。
・受傷経過を家族から詳細に聞き、記録する。
・虐待の疑いをにおわさず、純粋に情報収集する。
・患児が話せる年齢ならば、家族とは別々に問診する。
・皮下出血瘢・あざ(新旧のもの)
・皮膚の外傷(衣類などに隠れた部分)
・骨折(鼻骨折、新旧混在する骨折)
・頭蓋内出血(特に硬膜下血腫、網膜出血)
・眼外傷所見(白内障・出血・網膜剥離など)
・熱傷・火傷痕(タバコによるものなど)
・体重増加不良、栄養状態の不良
・発育不良や遅延(基礎疾患がないなど、納得がいく理由がない)
・薬物中毒
2 入院を勧める
・入院を勧め、患児の安全を確保する。
・家族にとって入院は、治療を受けるという安心につながる。
3 福祉事務所・児童相談所への通告
・福祉事務所・児童相談所への通告は、法律上の義務である。
児童虐待の防止等に関する法律
(児童虐待の早期発見等)
第五条 学校、児童福祉施設、病院その他児童の福祉に業務上関係のある団体及び学校の教職員、児童福祉施設の職員、医師、保健師、弁護士その他児童の福祉に職務上関係のある者は、児童虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、児童虐待の早期発見に努めなければならない。
(児童虐待に係る通告)
第六条 児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。
(親権の行使に関する配慮等)
第十四条 児童の親権を行う者は、児童のしつけに際して、体罰を加えることその他民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百二十条の規定による監護及び教育に必要な範囲を超える行為により当該児童を懲戒してはならず、当該児童の親権の適切な行使に配慮しなければならない。
4 入院を拒否する場合
・福祉事務所・児童相談所へ連絡し、対応を協議する。
・帰宅が危険な場合は、児童福祉法による「医療機関への一時保護委託」の形で入院治療を行う。
5 警察への通報
・虐待を疑う重篤な所見がある場合は、福祉事務所・児童相談所と同時に、警察に通報する。
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本連載は株式会社インターメディカの提供により掲載しています。
単行本に収録されているWeb動画は掲載していません。視聴されたい場合は、単行本をお買い求めください。
[出典] 『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』 監修 山元恵子/編著 佐々木祥子/2022年7月刊行/ インターメディカ