パトリシア・ベナーの看護理論:臨床での看護実践における卓越性とパワー

『新訂版 実践に生かす看護理論19 第2版』(サイオ出版)より転載。
今回はパトリシア・ベナーの「達人看護師」についての看護理論を解説します。

 

田尻后子
佛教大学保健医療技術学部看護学科 准教授

 

 

Point
  • ベナーは、患者をとおして看護師がどのように現場でケアを行っているか、ありのままの状況を分析している。以前は、あまり表に出なかった実際のケアについて、看護師が無意識に学習し、実践に活かしている部分を注目している。なかでも「経験的学習」を積むこと、そしてその経験を「語る」ことの重要性を述べている。
  • ベナーの看護理論は、多くの看護師からのインタビューと看護実践を観察することで看護実践の内容をありのままにとらえ、徹底的に綿密に記述し、ハイデッガーの現象学的な解釈法に基づいた内容や意味を明らかにした。
  • ベナーは、看護理論のなかで実践的知識と理論的知識の2つの知識の大切さを述べている。実践的知識とは、自然に身体で体得していく知識のことである。理論的知識とは構造や名称、機能について知ることである。
  • 技能習得に関するドレイファス・モデルを看護にも応用し、看護実践の技能の違いや、どのように実践技能を習得していくのかを示している。この習得段階には、初心者(novice)、新人(advanced beginner)、一人前(competent)、中堅(proficient)、達人(expert)の5段階である。
  • ベナーは、現実に行われている患者ケアの実践を明らかにするために、看護場面を観察したり、看護師たちのインタビューを通して詳しく記述した内容を分析した。その結果31の看護能力について特定し、それを7領域に区分けした。

 

 

ベナーの看護理論

ベナーの看護理論は、多くの看護師からインタビューと看護実践の観察をとおして、看護の実践内容をありのままに、かつ綿密に記述することで生まれた。

 

看護実践

患者が病気というストレスに対処していくため手助けする営み

 

「我々は実際の看護実践のなかに埋もれている知識についてわずかにしか学んでいない」(1992)と、彼女自身も述べているように、看護師が日常的に行っている看護ケアのなかには、看護師が自分たちでも認識していない優れた知識があることを発見したのである。

 

 

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実践的知識と理論的知識について

ベナーは、看護理論のなかで、実践的知識と理論的知識という2つの知識の大切さを述べている。

 

「泳ぐ」ということを例にして考えてみよう。

 

泳ぐことができる人のなかには、とくに泳ぎ方を学んだわけではなくとも、小さい頃から海川やプールに親しみ、水のなかに潜ったり遊んだりしているうちに、自然に泳げるようになったというケースがある。

 

これが「実践的知識」に該当する。

 

一方、水中ではない場所(教室など)で、言葉や視覚的資料を通じて学ぶ理論や根拠は、「理論的知識」になる。

 

たとえ理論的知識が十分にあったとしても、水に入ってすぐに上手に泳ぐことができるかといえば、難しいものである。

 

しかし、理論的知識をもちながら何度も水中で実践を繰り返したり、すでに泳げる人も理論的知識を身につけてさらに実践を繰り返せば、より一層高度で自分なりの泳ぎ方ができるようになる。

 

具体的には、ベナーは次のような例をあげている。

 

ある看護学生が、胃腸出血した患者に遭遇した際、患者に適切にケアできなかったと感じたことがあった。生理食塩水出血部を洗浄し、患者のショック状態を手当てすることに専念しており、患者にひと言も声をかける余裕がなかった。

 

しかし、同じ患者が次に出血を起こしたときは、この看護学生は患者を安心させるよう言葉をかけ、患者の気分を確かめることができた。

 

最初は、緊急時に対応すること自体が大変で、要求された仕事をこなすだけで精一杯だったが、次の機会には患者に十分配慮した対応が取れるようになった。

 

看護学生は、危機に必要とされる技術介入を行うという「理論的知識」はあったものの、患者にどのようなコミュニケーションを行えばいいのかという経験的学習がなかったために「実践的知識」が欠けていたということになる。

出典:パトリシア・ベナー、早野真佐子訳:達人の技を言葉にすることの意味、ナーシング・トゥデイ、17(12)、2002を要約

 

 

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技能習得に関するドレイファス・モデル

ドレイファス・モデルは、バークレイ校の教授である哲学者ヒューバート・ドレイファス(Hubert L.Dreyfus)と、数学者スチュアート・ドレイファス(Stuart E.Dreyfus)の兄弟が、チェスプレイヤーやパイロットの技能習得や上達のために開発したモデルである。

 

ベナーは、それを看護にも応用して看護実践の技能の違いやどのように修得していくのかを示している。

 

これには、①初心者(novice)、②新人(advanced beginner)、③一人前(competent)、④中堅(proficient)、⑤達人(expert)という5つの段階がある。

 

さらに、熟練した技能を習得するために、3つのポイントをあげている。

 

 

1実際に経験したことを次回に活かすこと

ベナーは、経験による学びを大変重要視している。

 

経験

単なる時間の経過ではなく、実際のケアで直面したことに対して、できたこと、できなかったことにかかわらず、そのことを考えたり、感じたりしていくなかで、どんな意味をもっていたのかを知覚していくこと

 

ここでいう経験的な学びとは、単なる時間的経過ではなく、それまでの自分の考えを転換したり、「自分はもっと優れた行動をとるべきだ」「もっと正確であるべきだった」などという認識をもつことである。

 

すべてのケア実践者は、自己の体験から学ぼうとする姿勢が必要だという。

 

 

2部分的ではなく状況の全体をとらえること

差し迫った状況のなかで直感が働くことを指す。

 

たとえば、糖尿病インスリン療法が始まった患者に、ある看護師が声をかけたとき、患者は「大丈夫です」と答えたとする。

 

しかし看護師は、患者の表情や動きなどから「いつもと違う、何か違うなぁ」と、とっさに感じ取って患者の異常がわかるということである。

 

 

3傍観者でなく患者の状況にのめり込むこと

客観的に患者をみるのではなく、患者の体験していることに寄り添い理解しようとすることである。

 

たとえば、苦痛を与える処置をする際に、たとえその苦痛が1分程度のものでも患者本人にとっては永遠に続くように感じることがある。

 

そのとき、看護師は時計で測った1分の苦痛に対して対処するのではなく、永遠に感じられる苦痛に対して対処すべきなのである。

 

これらを習得することで、各段階へと成長していくのである。

 

 

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5段階の具体的な内容

1初心者

初心者(novice)とは、看護学生やいままで経験したことのない領域で、はじめてケアをする看護師のことである。

 

その状況について経験がなく、原則は知っていてもその場に柔軟に対応できない看護師のことを指す。

 

たとえば、重症ケアの資格をもち、成人病ではかなりの経験を積んでいるスペシャリストでも、新生児の重症ケア病棟では初心者の段階になる。

 

 

2新人

新人(advanced beginner)とは、新卒看護師のことで、初心者に比べ、柔軟に対応して指導者に指摘されればそのとおりのケアができる。

 

しかし、自分で状況を判断して優先順位を決めることは、まだできない看護師を指す。

 

 

3一人前

一人前(competent)とは、同じ領域で2〜3年の臨床経験がある看護師のことである。

 

いまの状況や将来の予測を立て、優先順位を考えながら目標や計画を立てることができる看護師を指す。

 

次の段階の中堅よりは速さや柔軟性に欠けるが、効率的であり、偶発的な出来事に対処して管理する能力をもっている。やや生意気で、知ったかぶりをすることがある。

 

 

4中堅

すべての看護師が中堅(proficient)の看護師になれるわけではないが、通常、同じ領域で3〜5年の臨床経験がある看護師のことをいう。

 

患者の状況を部分的ではなく、統合的にとらえることができる。

 

あらかじめ設定された目標に頼らなくても、いろいろな側面をみて、その状況において重要か否かをすぐに判断できる。

 

たとえば、明らかなバイタルサインの変化が起こる前に、病状の悪化や問題を認識することができる能力をもっている。

 

 

5達人

中堅看護師と同様、たとえ臨床経験があってもすべての看護師が達人(expert)になれるわけではない。

 

人それぞれ経験の積み方に個人差があるため、経験年数で定めることはできない。

 

達人の看護師は、状況を理解して適切な行動をとるときに特徴や原則、ガイドラインなどに頼ることなく、直感的に判断することができる。

 

判断する際に、過去の経験から感覚や認識に基づき、正確に狙いをつけることができるのが、「達人」なのである。

 

 

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7領域と31の看護能力

ベナーは、現実の患者ケアの実践を明らかにするために、看護場面を観察したり看護師たちの面接をとおして、詳しく記述した内容を分析した結果、31の看護能力を特定した(表1)。

 

表1領域と看護能力

出典:パトリシア・ベナー、井部俊子ら訳:ベナー看護論̶達人ナースの卓越性とパワー、医学書院、1992より表を作成、一部改変

 

さらに、それらを7つの領域に分けた。

 

 

1援助役割

看護師は、患者に対して義務的・契約的なかかわりではなく、十分な心遣いや患者に寄り添うこと、傾聴することによって癒しを与えている。

 

 

2指導/手ほどきの機能

単に情報を提供するだけではなく、説明や指導、コミュニケーションをとおして患者の新たな可能性を提示していく。

 

 

3診断機能とモニタリング機能

ほとんどの時間を患者とともに過ごす看護師は、診断と患者モニタリング機能をとおして最初の手がかりをつかむ。

 

 

4急速に変化する状況における効果的な管理

緊急事態に十分な任務を果たせるよう、看護師はいろいろな専門家たちと機能を調整する。

 

 

5治療的介入と療法を施行し、モニタリングする

最新の複雑な治療法の介入やケアを行う際、看護師は無意識のなかでその人にあったケア方法を見つけ出す。

 

 

6質の高いヘルスケア実践をモニタリングし、保証する

看護師は、患者の側にいてチームメンバーの調整を行い、ミスを防ぎ、質の高いケアを提供する。

 

 

7組織化の能力と仕事役割能力

看護師の人員不足の場合でも、チームメンバー間での調整やチームワークをもち、お互い助け合う能力を必要とする。

 

 

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ベナーの看護理論から得るもの

ベナーは、患者をとおして看護師がどのように現場でケアを行っているか、というありのままの状況を分析している。

 

以前は、あまり表面的に出ることのなかった実際のケアについて、看護師が無意識に学習し、実践に活かしている部分に注目している。

 

そのなかでも「経験的学習」を積むこと、そしてその経験を「語る」ことの重要性を述べている。

 

ベナーの看護理論は、新人教育やその後の生涯教育の能力育成に役立つ。

 

また、看護師自身が自己のケアについて振り返るとき、単なる経験年数だけでなく、看護師自身の実践能力について評価するのに役立つ(表2)。

 

表2「初心者から達人へ」の自己評価法

出典:パトリシア・ベナー、照林社編:特別記事 エキスパートナース・フォーラム2001来日講演 達人看護論のパトリシア・ベナー博士が語る 看護実践の達人性とは何か そしてそれをどう育成するか、エキスパートナース 17(15)、2001より一部改変

 

 

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看護理論のメタパラダイム(4つの概念)

ベナーの看護理論のなかで明確に定義しているわけではないが、ベナーが考えている「人間」「環境(状況)」「健康」「看護」について述べる。

 

 

1人間

ベナーは、「現象学的人間論と看護」のなかで、以下のように述べている。

 

「人間は生まれつき備わっている能力を通じて己を身体的存在として感じ取りながら、そのような己にとって意味をもつ世界に住まうことができる」(1999)

 

つまり人間は、たとえ障害をもって生まれてきても、自分の住んでいる社会で自分自身が自立して生きていると考えるならば、「自分は障害者ではない」と認識することもある、ということである。

 

 

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2環境(状況)

ベナーは、「環境」と「状況」についての違いを述べ、人に影響を与えているのは「状況」である、としている。

 

「環境」は囲まれた部分で、そこに人間がいる場合もあれば、いない場合もある。

 

看護理論として重要なのは、人間がどんな「状況」に身を置いているかを知ることであると述べている。

 

たとえば、ある化学物質を取り扱う仕事をしている人たちは、危険な環境にある。

 

しかし、それだけではなく、その人たちは危険な化学物質を取り扱う仕事をせざるをえない状況にあるか、それを逃れて移住することもままならない状況にあるかという、経済的、政治的、社会的にさらされている事柄にも目を向けることが必要になる。

 

 

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3健康

ベナーは「健康」と「病気」と「疾患」について述べている。

 

健康は、「単に疾患や病気ではない状態だというわけではない」ととらえている。また、病気と疾患は似ているが、違ったものである。

 

疾患とは、細胞・組織レベルの失調であるのに対し、病気は能力や機能不全といった体験を指す。

 

人は何らかの疾患をもちながら、自分は病気だと感じていないことがある。

 

健康は、単なる生物として具えている部分を指しているのではなく、社会面、精神面も含めた調和のとれた感覚だといえる。そのためベナーは、「健康」ではなく、「安らぎ(well-being)」という言葉で説明している。

 

 

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4看護

ベナーは、「看護は『気遣い』(caring)である」と、その大切さを述べている。余命短い患者にも、生きているかぎりすべきことがある。

 

看護師としてそれを見捨ててしまうことは、気遣いがないといえる。

 

気遣いがある場合とない場合では、全く違った結果になる。

 

気遣うということは、信頼関係をつくり出し、患者に信頼関係のある条件下でケアすることによってはじめて、提供されたケアが受け入れられることになる。

 

 

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看護理論に基づく事例展開

ベナーの看護理論では、看護師に焦点が置かれている。

 

そのため、看護過程に沿って患者を事例展開することにはあまり適さないと思われる。

 

そこで、看護を展開するうえで新人看護師とベテラン看護師がどう違ってくるのかを述べる(表3)。

 

事例

Aさんは28歳、妊娠41週の2経産婦。夫と2歳と5歳の子どもとの四人暮らしである。昼の1時ごろから10分ごとの規則的な陣痛が始まり、「1時30分に来院する」との電話連絡があった。病院まで車で30分かかるとのことである。

 

表3新人看護師とベテラン看護師との違い

 

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事例展開から考えること

産科病棟の1シーンを取り上げ、新人看護師とベテラン看護師の違いを比較して事例展開させた。

 

同じ情報であっても、アセスメントの違いによって産婦に与える影響が全く異なることがわかる。

 

新人看護師も、原則に沿って考えれば、間違ったアセスメントではなかったと思う。

 

しかし、ベテラン看護師は、これまでの経験をもとに直感的に産婦の状況を予測できたために、大きな違いとなって現われたのである。

 

これをベナーの看護理論に照らし合わせてみよう。

 

 

新人看護師の場合は、産婦の来院時の予測ができなかったので、優先すべきことの判断を間違えてしまった。

 

そのため来院時、来院前の情報と違った急速な分娩進行の状況にも柔軟に対応できず産婦にとって不安な分娩となった。まさしく新人看護師の段階といえる。

 

対照的にベテラン看護師の場合は、かぎられた一つひとつの情報がどのような意味をもつかということを、経験や知恵を総合的に働かせて産婦の全体像の予測をつかむことができた。

 

そのため、事前に分娩室の準備や病院の玄関で待機するといった行動をとることで、一刻も早く産婦のケアや情報を知ることができ、余裕をもって対応できた。

 

また、産婦自身も急激な分娩の進行状態や陣痛の痛みに不安を抱いていた。

 

そんな状況のなか、ベテラン看護師は穏やかに話しかけながら産婦に寄り添い、気遣うことで、信頼関係を築いている。

 

このベテラン看護師は、ベナーのいう「達人看護師」といえる。新人看護師も、今後これらの経験を積むことで、達人看護師をめざすことが可能である。

 

 

ベナーについて(詳細を見る) ベナーについて

パトリシア・ベナー(Patricia Benner)の看護理論といえば、「達人看護師」という言葉を思い出す人も多いのではないだろうか。

 

ベナーは、現在も活躍している看護理論家である。

 

彼女は、その看護理論のなかで「ドレイファス・モデル」を臨床実践に適応して看護師を5つの段階で表した。

 

また、多くの看護師にインタビューを行い、その内容から7つの看護領域と31の能力を明らかにした。

 

 

ベナーの経歴

ベナーは、アメリカ東部のバージニア州ハンプソンで生まれ、小学校時代からアメリカ西部のカリフォルニアで育った。

 

ロサンゼルスの北東郊にあるパサデナ大学で看護学を学び、1964年に卒業する。

 

1970年には、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の看護学部で内科・外科看護を専攻し、修士号を取得した。

 

その後、同大学バークレイ校でリチャード・S.ラザルス(R.S.Lazarus)の研究助手を務めながら、教育学部でストレスコーピングを専攻し、1982年博士号を取得している。

 

実務経験では、心臓ケア病棟で2年間のスタッフナースを経て主任になり、その後集中治療室や急性期の看護ケア、訪問看護にも携わった経験をもっている。

 

1982年には教授になり、現在も幅広く活動している。なお、数回来日しており、最近では2017年に東京と京都で講演している。

 

 

数々の受賞歴

ベナーは、アメリカン・ジャーナル・オブ・ナーシング(AJN)による書籍対象(The Book of Year)を2度も受賞している。

 

1つは1984年の『From Novice to Expert:Excellence and Power in Clinical Nursing Practice』(『ベナー看護論 達人ナースの卓越性とパワー』)、もう1つは1989年に出された『The Primacy of Caring:Stress and Coping in Health and Illness』(『現象学的人間論』)である。

 

また、1985年には、看護で業績を上げた人々をメンバーとする団体であるアメリカン・アカデミー・オブ・ナーシングへの入会も認められた。

 

さらに、1989年には教育分野でのリーダーシップに対して、アメリカ看護連盟のリンダ・リチャード賞を授与されている。

 

 

影響を受けた人々

ベナーは、ヴァージニア・ヘンダーソン(Virginia Henderson)から、長年にわたって看護に関する考え方の影響を受けている。

 

また、ベナーが行っている解釈的記述的研究(質的研究の1つの研究方法)では、現象学を用いている。

 

この現象学の活用に導いたのは、カリフォルニア大学バークレイ校で哲学を教えていたヒューバート・ドレイファス教授(Hubert L.Dreyfus)である。

 

現象学に関しては、ドレイファスのほかに、ドイツの哲学者マルティン・ハイデッガー(M.Heidegger)や、デンマークの哲学者セーレン・A.キルケゴール(S.A.Kierkegaard)の影響を受けることも多かったようである。

 

 

著述活動

1978年から1981年にかけて、連邦政府の助成金を得たプロジェクト「専門職内部での同意、査定、評価に関する達成法」(通称AMICAE)とよばれる研究から、多くの著書や論文が発表された。

 

代表的な著書では、前述した『From Novice to Expert:Excellence and Power in Clinical Nursing Practice』がある。

 

この著書では多くの実例を紹介したうえで、看護実践について記述している。また、7つの領域と31の看護能力について詳しく述べている。

 

また、1989年の『The Primacy of Caring:Stress and Coping in Health and Illness』では、ケアリングについて述べている。その他、日本語訳された著書が数々出版されている。

 

 

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本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『新訂版 実践に生かす看護理論19 第2版』 編著/城ヶ端初子/2018年11月刊行/ サイオ出版

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