座位時:ベッド上、椅子上
『写真でわかる看護技術 日常ケア場面でのポジショニング』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は、ベッド上や椅子上での座位時のポジショニングについて解説します。
田中マキ子
山口県立大学看護栄養学部教授
栁井幸恵
綜合病院山口赤十字病院/皮膚・排泄ケア認定看護師
ポジショニングのポイント
- ベッド上でも椅子上でも、座位時には座面の安定が図られる体位を工夫する。安定が図れる体位の基本は「90度ルール」である。
- ベッド上座位では、殿部の接触圧が低い体位を目指すよう適切なマットレスを選択する。
- 椅子上座位では、殿部のずれ力緩和を目指すよう、適切な座面クッションを検討する。
- 円背患者の座位でのポジショニングでは、背部のピローを入れて調整する。
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座位姿勢の基本
座位時の姿勢の基本的な考え方は、ベッド上でも椅子上でも同じである。
ベッド上座位では、ベッドのリクライニング・ポイントと身体の屈曲ポイントを合わせてずれ力を軽減させる必要がある(図1)。
図1ベッド上座位の身体の屈曲ポイントとずれ力(75度背上げ時)
座位では、可能な限り、股関節90度、膝関節90度、足関節90度の「90度ルール」を守ることが原則となる(図2)。
90度ルールにより、体圧は大腿後面全体で圧分散されるため、重要である。
座位時間は1時間以内とし、可能ならときどきプッシュアップを行う。
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ポジショニング・グローブによる圧解除
ポジショニング時には、必ずポジショニング・グローブによる圧解除を行う(図3-①、図3-②、図3-③)。
図3-①患者の身体に指が触れることで違和感が生じるため手のひらがベッド側に向くようにして行う
図3-②ポジショニング・グローブを装着し、ベッド側を押すように挿入する(患者に痛みを与えない)
図3-③患者の身体に平行になるように手を挿入するために、看護者は肩を下げ、患者の身体の下に水平に手を滑らせていく(ベッド側を押すようにしたまま)
ポジショニング・グローブによる体圧変化を図4に示す(図4)。
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適切なマットレス、座面クッションの使用
1 ベッド上座位:適切なマットレスの選択
ベッド上座位になった場合は、臥位と比べると接触面積が狭まり殿部圧が上昇する。そのため、できる限り殿部圧が低下する構造を有するマットレスを選択する必要がある。
厚さ10cm以上を有する高機能体圧分散用具は、座位時にあっても底付きを起こさないため、優先的に選択されるマットレスとして有効である。
硬いマットレスでのベッド上座位と柔らかいマットレスでの座位を示した(図5-①、図5-②)。
図5-②柔らかいマットレスでのベッド上座位(フィール®使用の場合)
2 マットレスの種類の選択
体圧分散用具を用いる場合、端座位で患者が座る部分が柔らかい材質では、座位が安定しない。
マットレスの両サイドに安定性をもたせたハイブリッドタイプのマットレス(図6)を選択するとよい。
3 座位位置の調整(図7)
座位になる位置は、しっかり深く座れるよう、膝関節部がベッドの端に来るようにする。
深く座ることにより座位姿勢が安定し、余計な筋緊張がかからず良肢位が持続すると長い時間の座位が可能となる。
4 座位姿勢の安定
端座位姿勢をとった後、姿勢保持の持続が困難な場合はピローや背面開放型端座位保持具等を用いて支持する。
1)ピローによる補正
骨盤を安定させることによって、座位姿勢が安定し、座位姿勢保持が可能となる。
2つのピローをあらかじめベッド上に殿部が安定するようにVの字に配置する(図8-①)。患者の体格によって、ピロー幅を調整する。
身体の内側にあたる部分のピローの厚さを薄くし、外側部分を厚くすることによって、より安定感が増す(図8-②、図9)。
ピローで殿部を包むように座り、圧抜き、もしくは左右に患者の身体を傾け、ピローと皮膚の接触面に生じるずれを解除する(図9)。
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身体のアライメントの重要性
座位にあっては、臥位以上に身体のアライメントが重要になる。座面に脊柱が垂直に刺さるイメージになる。
座面は、仙腸関節の関係から骨盤が開くような状態になると座面(骨盤面)の安定を図れない。そのため、ベッド上・椅子上ともに骨盤が開かないように座面の安定を図ることが重要である(図10)。
椅子上座位では、股関節の内外転・内旋・外旋と座位のくずれに注意する(図11-①、図11-②)。
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車椅子上の座位姿勢
1 座面クッションの選択
椅子上座位の場合もベッド上座位とほぼ同様である。安定が図れるような座位姿勢が基本となる(図12)。
前座りにならないよう、骨盤を調整する(図13)。
前方へのずれを予防するために下肢側を高くする(図14)。
座面クッションには各種あり、それぞれの構造・機能によって、座面圧等が変化する他、ずれ力の緩和能等が異なる。
ベッド上座位では、ずれ力は体位を保持した時点(仰臥位~座位にした際)を考慮すればよいが、椅子上の場合、仙骨座り等によって前方へ滑るような姿勢の場合、ずれ力を緩衝する機能を持つジェル等を単体またはハイブリッド構造として有する座面クッションが有効である。
2 ピローの選択と使用
座位の安定を図るためにピローを使用し、体位調整を図ると座位姿勢の安定が図られる。
座位姿勢の安定は、部分圧迫にも至らず、座位時間の延長や楽に座るなどにつながる。
ピローのサイズや素材が不適切であると、挿入されたピローをよけようとし、座位姿勢のくずれや不安定を招くため、支持力はあるが硬すぎず違和感を生じない素材が重要である。
座った際には、食事をする、手作業をするなど、さまざまな活動(作業)が期待されるため、こうした活動を邪魔しない形状(大きさ)を考慮しなくてはならない。
椅子上座位では、背部の両サイドからピローを挿入して座位の安定を図る(図15)。
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片麻痺患者のポジショニング
1 ベッド上体位
片麻痺患者のベッド上体位では、①骨盤を安定させる、②沈んでいる側の身体下にピローを挿入して左右を平行にする、③両下肢が中間位になるように股関節への調整を行うことが必要になる(図16)。
上記が可能なようなピローの挿入と圧抜きがポイントになる。
2 椅子上座位
片麻痺患者の椅子上座位では、麻痺側の下肢の下に大きめのピローを挿入して座位バランスを保つことが重要である(図17)。
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円背患者のポジショニング
ベッド上では、ベッドのリクライニング機能を用いたうえで、円背全体を覆うような大きなピローを使用する。それによって背部の部分圧迫回避と安定を図ることができる(図18)。
円背患者には、両サイドからピローを挿入し、突出した背部に部分圧迫を生じさせない方法もある(図19)。
いずれの方法でも、脊柱をまっすぐさせるために首が後屈しないようにする。
図19円背患者のベッド上体位では、両サイドからピローを入れる方法もある
椅子上座位では、背部にピローを入れて体位を調整する(図20)。
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『写真でわかる看護技術 日常ケア場面でのポジショニング』 編著/田中マキ子/2014年8月刊行/ 照林社