日常生活援助の際に「体位」を重視することの意味
『写真でわかる看護技術 日常ケア場面でのポジショニング』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は日常生活援助で「体位」を重視する意味について解説します。
田中マキ子
山口県立大学看護栄養学部教授
看護師が行う日常生活援助は、看護本来の力を発揮できる重要な業務と言えます。
患者(利用者)は、疾患のため、あるいは治療上の必要性のため、またそれらに関連した障害によって身のまわりの行為が行えないことが多くあります。その援助のためには確かな看護技術と状況に応じた適切な技術の施行が必要になります。
日常生活援助を行う際に必要となる要素について表1にまとめました。これらの要素を満たしてこそ、看護のプロフェッショナルである私たちが提供する援助技術=技と言えるでしょう。
POINT
いくつかの看護行為を見てみると、技術のベースとして「体位管理」がある。看護行為をさらにブラッシュアップするための重要な要素の一つである。
日常生活援助技術を提供するとき、私たちはどれだけプロの技であることを意識し、または研鑽的視点をもって行っているでしょうか。看護行為に対する評価は、難易度や提供者の経験の有無にかかわらず一律一様なものに終わっているように思われます。
そこで私たちは、プロの技としてどのような効果があり、患者に満足感を与えることができているかどうかをリフレクションする必要があるでしょう。
そうした振り返りのなかで、さらに看護行為をブラッシュアップするための重要な要素の一つとして「体位管理」が挙げられるのではないかと考えました。
あらためていくつかの看護行為を見てみると、技術のベースとして「安楽な体位の保持」や「体位の工夫」などが見られることがわかります(表2、表3)。
日常生活援助のための看護行為にはさまざまな手順が必要とされます。そのために、基本となる「体位管理」の要素が看護師に十分意識されていないことが多いように思われます。さらに、患者は麻痺や拘縮等によりさまざまな制限要因を持っています。そのため日常生活援助における「体位」の調整は個別性に左右される部分が大きいように思われがちです。
しかし、基本的な考え方や方法は共通です。そのうえで個々の患者に応じた「コツ」「わざ」があることを認識していただきたいと思います。
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『写真でわかる看護技術 日常ケア場面でのポジショニング』 編著/田中マキ子/2014年8月刊行/ 照林社