急変時のコミュニケーション
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は急変時のコミュニケーションについて解説します。
道又元裕
Critical Care Research Institute(CCRI)代表
急変時には、スタッフや医師など、多職種と効率よくコミュニケーションをとらなければなりません。
コミュニケーションをとる相手は、医療者だけではありません。
意識のある患者であれば患者とも、また、電話連絡などを通じて家族ともコミュニケーションをとることが必要となります。
医療者とのコミュニケーション
1 他職種とのコミュニケーション
医療者とのコミュニケーションでは「必要なことを効率よく伝え合う」ことが求められます。
前述したドクターコールも、広い意味では「医師とのコミュニケーション」に含まれます。
たとえ、相手が医師であっても「言いにくくても、伝えるべきことは、しっかり伝える」ことが大切です。この際、自分の意見を押し通すのではなく、相手の意見も尊重しつつ、対等に誠実に話すこと、つまりアサーティブなコミュニケーションが大切です(図1)。
2 看護師どうしのコミュニケーション
看護師どうしのコミュニケーションも大切です。日勤↔夜勤の引き継ぎや申し送り、新人↔先輩、スタッフ↔リーダーなど、さまざまな場面が考えられます。
「忙しそうだから、後で伝えよう…」などと考えているうちに、忙しさに紛れて、大事な情報を伝えそびれてしまうことも考えられます。
コミュニケーション不全によって必要な情報がこぼれ落ちないようにしなければなりません。
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患者や家族とのコミュニケーション
患者や家族からの情報収集も、広い意味ではコミュニケーションに含まれます。
急変時のアセスメントでは、主訴や病歴も大事な情報となります。「いつもの◯◯だろう」などと決めつけず、しっかり情報収集をしましょう(くわしくは「「普段よくある体調変化」から、急変を見抜くポイントは?」)。
なお、問診時には、言いづらいことや言うほどでもない症状がないか、確認してみることをお勧めします。急変の前ぶれサインである精神的な不安などは、患者自身が軽視していることもあるためです。
普段の患者をよく知っている家族だけが気づいている症状もあります。
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急変対応、特に心肺蘇生は時間が勝負です。コミュニケーションがしっかりとれていないと、迅速に対応できず、結果的に患者に不利益をもたらしかねないことを、私たち看護師は、肝に銘じておく必要があります。
●アサーティブなコミュニケーションは、コミュニケーションをとる相手が誰であっても大切です。常に「相手の意見も尊重しつつ、対等に誠実に話すこと」を意識しながらコミュニケーションをとるようにしましょう。
●医師の指示に疑問がある場合には、あいまいにせず、アサーティブなコミュニケーションを意識しながら、「なぜその指示なのか/その指示では不安が残る」ことを伝え、医師指示の真意を知ろうとすることが大切です。医師の答えを聞いても納得できない場合には「まだ心配や不安が残っている」と伝えてもよいでしょう。
●新人看護師とのコミュニケーションで悩む場合は「報告しづらい/話しかけにくい」状況に陥っていないか、一度振り返ってみましょう。「これくらいは、わかっているだろう」と考えず、大事なことは具体的に説明して、チェックバック(言われた内容を復唱して再確認すること)を行うよう心がけることも大切です。意図的に先輩看護師やプリセプターがフォローの声かけをしてみてもよいかもしれません。
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[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社