DNARの患者が心停止。すると家族が「助けてください」と言いだした。気持ちはわかるが、どうすれば?
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回はDNARの患者の急変時に家族から救命の依頼があったときの対応について解説します。
徳永里絵
桜橋渡辺未来医療病院 看護部(外来)外来師長/救急看護認定看護師
DNARの患者が心停止。すると家族が「助けてください」と言いだした。気持ちはわかるが、どうすれば?
家族の意向を尊重し、心肺蘇生を開始します。
「一度DNARをとったから変更できない」わけではありません。
DNAR(蘇生適応除外)指示は、医師・看護師などの医療チーム、患者・家族すべての同意が得られないと効果を発揮しません。一度、同意を得られたとしても、患者の治療経過に準じて医療者または患者・家族から意向の変更があった場合は、指示を中止し、再度話し合いを行う必要があります。
この質問のケースでは、患者の急変に直面した家族の心情に変化が生じ、「心肺蘇生をしない」という意向から「心肺蘇生を希望する」という意向への変更が生じています。そのため、蘇生チームはその意思を尊重し、心肺蘇生を行います。
「DNARだから、もう蘇生は行わない」という対応をしてはいけないのです。
家族の気持ちは揺れるもの
家族は、たとえ死を受け入れるために心の整理を行っていたとしても、実際に「患者が死んでしまうかもしれない」状況になると、動揺し混乱することがあります。私たち看護師は、そういった家族の心情を理解したうえでかかわることが大切です。
そして、DNAR指示がなされる状況、つまり、蘇生行為を行っても蘇生成功の可能性が少ない状況であることをふまえ、再度、医師・看護師などの医療チームと家族が治療方針について話し合えるように調整します。
状況によっては、蘇生現場への立ち会いも考慮するなど、家族にとって悔いの残らない選択ができるように援助を行う必要があります。
引用・参考文献
1)日本集中治療医学会,日本救急医学会,日本循環器学会:救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン~3学会からの提言~.[2018.7.2アクセス]
2)水野俊誠,前田正一:終末期医療.赤林朗 編,入門・医療倫理I 改訂版,勁草書房,東京,2017:318.
3)水谷希美:CPAOA患者家族への対応.山勢博彰 編著,看護師による精神的援助の理論と実践,メディカ出版,大阪,2010:156.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社