急変発生!リーダー看護師は、どう動けばいい?
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は急変時のリーダー看護師の動き方について解説します。
菅原直子
杏林大学医学部付属病院 看護部 主任/集中ケア認定看護師
急変発生!リーダー看護師は、どう動けばいい?
急変対応の現場を調整してください。応援到着まではCPR介助を実施することもありますが、応援到着後は現場の調整に専念するのが理想です。
リーダー看護師の役割は、患者の状態、現場の状況など、全体を把握し調整することです。緊急コールを発令してALS(二次救命処置)チームを招集し、病棟看護師の役割分担を任命し、急変対応の環境を整えます(図1)。
リーダー看護師の動き方
1 病棟スタッフへの応援要請と、緊急コールでのALSチーム招集
急変時には、患者の救命を第一とした迅速な対応が必要です。現場は混乱する傾向にあり、リーダー看護師は全体の状況を把握し、病棟スタッフに指示命令を行って、迅速な対応ができるよう現場を調整しなくてはなりません。
急変時には複数のスタッフがかかわり、その役割も、受け持ち、応援・外回り、記録・タイムキーパー、他患者の対応などさまざまです。リーダー看護師は、全体の状況を把握するため、その場を離れず、まずは、必要人数の確保のため、病棟スタッフへ応援要請を行います。
同時に緊急コールを発令し、ALSチームを招集してください。ALSチームが到着するまでは、CPR(心肺蘇生)の開始を遅らせることなく、質を維持した CPRを継続することが大事です。
マンパワー不足の場合、応援到着まで、リーダー看護師が他の役割を兼務せざるをえないことがあります。その場合、応援が到着したら到着したスタッフに、名指しで役割を任命してください。
2 急変対応・蘇生環境の整備
急変患者のベッドサイドには、多くの医療者やモニタ、除細動器、救急カートなどが集まります。プライバシーの保護に努めつつ、迅速に急変対応ができ、動線が短くなるように、ハード面を整えることも重要です。
気道確保やバッグバルブマスク換気ができるように背板(バックボード)を外し、頭側に人が入れるよう、スペースを確保します。救急カートや除細動器をベッドサイドに配置できるよう、ベッドの位置調整も必要です。胸骨圧迫を行う場合には、エアマットの空気を抜き、背板を挿入し、足台の準備も行います。
また、ALSチームが迅速に対応できるよう、末梢静脈路留置の準備、薬剤(アドレナリン)準備、気管挿管準備、モニタの装着も行います。
3 ALSチームの医師と情報共有
ALSチームが到着したら、まず自分がリーダーであることを宣言し、情報を共有します。
患者の入院時の診断名、CPA(心肺停止)を確認した状況、CPR開始時間、AED(自動体外式除細動器)使用の有無、薬剤投与可能な末梢静脈路の有無を伝えます。
その際、患者の治療方針を確認し、DNAR(蘇生適応除外)かどうかを報告することも大切です。
4 家族へのケア
急変時、患者の家族への連絡を看護師が行うことも少なくありません。家族は、病院から電話がかかってきたことだけでも動揺するため、連絡する際には配慮が必要です。患者が急変していること、すぐに病院に来てほしいことを明確に伝え、交通手段や来院までの到着時間を確認しましょう。
家族に対する情報提供は、ALSチームの医師や主治医と相談し、適宜実施していきます。
時に、面会中の急変や、家族が急変を発見する場合があります。その場合、家族を別室に案内し、待機してもらいます。このとき家族は、何が起きているのか、どのような状況か、大きな不安と危機的状況に直面しているため、精神的ケアが必要となる場合もあります。
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引用・参考文献
1)田村富美子,安田英美:看護師だけで急変対応を行うときの「役割分担」と「具体的な動きかた」.月刊ナーシング 2013;33(6):70‐78.
2)森安恵実:すぐに動ける!急変対応 カギは役割分担とコミュニケーション!:エキスパートナース2016;32(5):12‐13.
3)桐本千恵美:すぐに動ける!リーダーのポイント:エキスパートナース2016;32(5):20‐23.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社