夜間、徐々に状態悪化。何度も医師に報告したが「経過観察」のまま…。どうすればいい?
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は夜間の状態悪化した患者の医師への報告について解説します。
清水明美
公立昭和病院 看護部 副看護部長/救急看護認定看護師
夜間、徐々に状態悪化。何度も医師に報告したが「経過観察」のまま…。どうすればいい?
重症度と緊急度をはっきり伝えることが大切です。「悪化の徴候がある」「想定された問題が生じている」ことに焦点を絞って報告します。
医師に状態を報告するとき、何を一番に報告すればよいのでしょうか?
私たち看護師は、報告内容に「バイタルサイン」「時間経過」「患者の訴え(苦しい、痛い、など)」「自分のアセスメント」など、患者の状態変化のすべてを盛り込みがちです。その結果、医師に報告したいことが伝わらないケースをしばしば見受けます。
夜間であれば、なおさらです。医師の機嫌を損ねないように…と報告時に緊張してしまうと、いつも以上に報告したいことが伝わりません。適切な指示がもらえなければ、当然、朝までに患者の状態が悪化し、医師より「報告がなってない!」などと叱責されてしまいます。これでは、医療者間の溝が深まるばかりです。
では、医師は、どんな情報を知りたいと思っているのでしょうか?どのように報告したら、夜間でも、私たち看護師の報告に耳を傾けてくれるのでしょうか?
ここでは医師が知りたい情報の視点から、医師と患者情報を共有できる報告方法を考えていきます。
「診断」に必要な情報を伝える
医師は、診断・治療をしていかなければなりません。そのため「診断・治療の視点から必要な情報かどうか」を考えると、何にアプローチし、観察すればいいかがわかります。私たちが得た情報を医師に伝える方法の1つが「I‐SBAR‐C(アイエスバーシー)」です(詳しくは「うまく伝わる「報告」「連絡」」)。
I-SBAR-Cを用いると、即刻対応が必要だった場合、正確に早急に情報を伝達し、共有することが可能です。患者の声に耳を傾け、察知できた情報を I-SBAR-Cに当てはめると、報告する内容が明確になります。
目次に戻る
「医師を動かす」キーワード
1 重症度と緊急度
患者の状態が「いつもと何か違う」と感じたら、重症度と緊急度を判断しましょう。なぜなら、これらが「医師を動かす」キーワードであるからです。
しかし、患者の訴えはさまざまで、症状や病態はそれ以上にたくさんあります。「経過観察」と医師に言われた場合には、漠然と経過をみるだけでなく、患者の発信する情報を意識的にとるようにしながら、継続して観察を行うことが大切です。
つまり、重症度・緊急度の判断には、患者の状況や特徴をよくつかむことが必要なのです(表1)。
自分の直感を意識的に伝える必要があるため、「生じている問題」「情報収集」「評価」の順に進め、そこからみえてくる問題の仮説を立てて、それを検証していきましょう。なぜ・どうして・どのようにといった根拠を具体化できるかがポイントとなります。
2 悪化の徴候・想定される問題
具体的な指示がないときは「悪化の徴候を見逃さない」「想定される問題をとらえているか」もポイントになります。患者の症状を聞き、フィジカルイグザミネーションで客観的な情報を確認して整理し、情報と自分の判断を伝えましょう。
もし、その判断に自信がもてなかったり、不安だったりする場合には、整理した情報の他に「考えられる疾患や疑わしい内容」も付け加えると、医師が判断しやすくなります。しかし、判断に時間を費やし、医師への報告が遅れないように注意しましょう。
医師への効果的な報告が可能になれば、さらに質の高いケア・看護が提供できます。
3 関係性を築く
夜間でも、医師と情報を共有できる関係性も重要です。
目的・目標・アプローチの共有、スキルを備えた集団、互いを尊重し合える関係性、その機能を最大限に発揮できるのが、よいチームです。そのためにも、I‐SBAR‐Cに沿った報告を適切に行うことが必要です。
目次に戻る
引用・参考文献
1)石松伸一 監修:実践につよくなる 看護の臨床推論.学研メディカル秀潤社,東京,2014:1.
2)高田史門,山口恭一:はじめの一歩はバイタルサイン.レジデントノート2016;18(3):460‐467.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社