心不全の患者。起座呼吸なのに、酸素マスクや点滴を嫌がる…。どうすればいい?
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は酸素マスクや点滴を嫌がる心不全の患者対応について解説します。
宮地さやか
兵庫県立尼崎総合医療センター 看護部/慢性心不全看護認定看護師
心不全の患者。起座呼吸なのに、酸素マスクや点滴を嫌がる…。どうすればいい?
会話ができる患者なら「治療によるメリット」を説明します。興奮により呼吸状態が悪化しないよう、薬剤調整を行うこともあります。
患者と会話ができる状況かを確認したうえで、タッチングを行いながら、なぜ嫌なのかを患者自身に確認します。患者の答えは「苦しいのにマスクなんかつけていられない」「痛いこと、苦しいことは嫌」「怖い」などさまざまでしょう。
患者が嫌だと感じている事実について、患者と思いを共有したうえで、治療の必要性や効果を再度説明し、治療を行うと身体が楽になることを説明します。同時に、治療しないことで生じるデメリットや苦痛が緩和されない事実についても説明します。
また、医療チームは患者の病状を改善したいと考えていること、治療を行って病状を改善させるためには患者自身の協力が必要不可欠であることを伝えます(図1)。
病状が安定し、症状が改善するまでは、患者が少しでも安心して治療やケアを受けられるよう、可能な限り、ベッドサイドに看護師が付き添うとよいでしょう。
心不全に伴う呼吸困難に加え、total pain[トータルペイン]による苦痛から興奮が生じると、呼吸回数がさらに増加してしまうこともあるため、必要時は医師と相談し薬剤調整も行います。
身体的な苦痛、環境の変化、精神的な苦痛から、せん妄状態になっている患者に対しては、主治医と相談し、せん妄治療も並行して行いましょう。
[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社