気管挿管後の確認。「EDD(食道挿管検知器)の信頼性は低い」というのは、本当?
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回はEDD(食道挿管検知器)の信頼性について解説します。
吉崎秀和
北海道医療センター統括診療部 救命救急部救急科 診療看護師
気管挿管後の確認。「EDD(食道挿管検知器)の信頼性は低い」というのは、本当?
約30%が誤判定とする研究もあります。
あくまで補助的な手段と考えましょう。
EDD(食道挿管検知器)は、気管チューブのコネクタに凹ませたバルブを接続し、その膨らみ具合で気管チューブの位置(気管か食道か)を確認するものです(図1)。
気管チューブが食道にある場合、バルブは膨張しません。食道内には空気がないため、凹んだバルブが吸引することで陰圧が生じ、食道が虚脱して食道壁を吸引してしまい、気管チューブ先端が閉鎖されるためです。
一方、気管には空気が存在するため、正しく気管挿管されていれば、EDDは元の形状に戻ります。
しかし、EDDは、病的肥満や妊娠後期、喘息、気管内分泌物が多いときなど、気管が虚脱傾向にある場合には、誤った判断につながる可能性が指摘されています。
また、正しく気管挿管されていても30%近くが食道挿管と誤認識され抜去されているという報告もあります1)。
EDDは、気管チューブのおおまかな挿入位置を知る手助けとなるものの、100%気管挿管と判断できないことを念頭に置く必要があります。
気管挿管の確認法
EDDが常備されていても、臨床の場で使用している場面はほとんど見かけません。
気管挿管の確認方法として最優先されるのは、気管挿管直後の視認による胸郭挙上の確認です。また、呼気による気管チューブ内側面のくもり(図1のくもり確認部)が1つのめやすになります。
そのうえで、胸部聴診による左右の呼吸音確認(片肺挿管の否定)と心窩部聴診による胃内への空気流入音がないこと(食道挿管の否定)を確認します。
EDDは、あくまで補助的なものと考えるのが妥当でしょう。
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引用・参考文献
1)Tanigawa K,Takeda T,Goto E,et al.The efficacy of esophageal detectordevices in verifying tracheal tube placement:a randomized cross-over study of out‐of‐hospital cardiac arrest patients.Anesth Analg 2001;92(2):375‐378.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社