とても小柄でやせた患者が心停止。胸骨圧迫は、片手で行う?両手で行う?
『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は小柄でやせた患者の心停止時の胸骨圧迫について解説します。
門馬 治
日本医科大学武蔵小杉病院 看護部 救命救急センター 看護係長/救急看護認定看護師
とても小柄でやせた患者が心停止。胸骨圧迫は、片手で行う?両手で行う?
姿勢を安定させるためにも、両手で圧迫したほうがいいでしょう。
成人は「両手で圧迫」が原則
日本の心肺蘇生ガイドライン1)では、胸骨圧迫を両手で行うか、片手で行うか、どちらが患者にとって有益もしくは有害かを論じていないのが現状です。
胸骨圧迫で重要なのは、押す強さに加え、しっかり圧迫解除して心臓に戻ってくる血液量を増やし、冠血流量を増加させることです。
片手で胸骨圧迫を行うと、施行者が上半身のバランスを失って患者の胸壁にもたれかかってしまい、しっかり圧迫解除できなくなる可能性が高くなります。そのため、小児並みの体格の患者であっても、片手での圧迫は行わないほうがよいでしょう。
なお、両手で圧迫する場合、従来の方法(片手の手根部を胸のまんなかに置き、もう一方の手をその手に重ねて圧迫する方法)を指導する場合には、「手の位置が胸骨の下半分にくるよう実演指導する」1)ことをガイドラインでは推奨しています(図1)。
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「5cm以上」の圧迫は必須
標準的な体格の成人に対する胸骨圧迫の強さは、現在「6cmを超える過剰な圧迫を避け、約5cmの深さで行う」1)ことが推奨されています。これは、圧迫の深さが6cm以上の場合、外傷の発生率は63%という研究結果が1件あり、有害発生を示唆するという理由からです。
その一方で、5cm以上の圧迫が、神経学的転帰やROSC[ロスク](自己心拍再開)率を向上させたという研究結果は多数存在します。
小柄でやせた患者でも、胸骨圧迫するときは、正しい姿勢を保持し、両手を使った5cm以上の圧迫と確実な除圧(圧迫解除)、さらに、過度な圧迫を避ける努力をするのが望ましいでしょう。
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[出典] 『いまさら聞けない!急変対応Q&A』 編著/道又元裕ほか/2018年9月刊行/ 照林社