ルート確保がうまくいくコツ5つ|ルート確保の達人になる!【1】
看護技術の中でも苦手な人が多い「ルート確保」。
この記事では、末梢静脈でのルート確保がうまくいくためのコツを5つ紹介します!
看護監修:小出智一(東京ベイ・浦安市川医療センター 看護部救急外来部門)
医療監修:志賀隆(国際医療福祉大学 医学部 救急医学主任教授・同大学成田病院救急科部長)
コツ1:末梢側からトライ
1つめのコツは、できるだけ末梢側からトライすることです。
静脈の血液は、末梢から中枢に向かって流れています。
一度、穿刺した部位からは薬液が漏れる可能性があり、同じ血管では、その位置よりも中枢側にしか穿刺できなくなってしまうので、末梢側から穿刺する必要があります。
★ポイント★
患者さんの腕を見て、ココがダメならココというように、穿刺部位は第1候補から第3候補くらいまで考えておきましょう。
静脈穿刺は、誰でも失敗することはあります。血管の細さや見えづらさなどの理由だけでなく、静脈の中にある弁に当たって針が進まないことも。だから、できるだけ末梢側からトライしていきましょう。
まずは前腕部を狙う
第1候補でまず狙いやすいのは、前腕部の橈骨側もしくは尺骨側です。
神経損傷を起こしやすい手首から肘側12cm以内を避け、前腕部に良い血管がないか探してみましょう。
前腕部は、橈骨側で失敗したら尺骨側へ、尺骨側で失敗したら橈骨側へと、次の候補を考えやすい部位です。
正中部はできるだけ避けた方がベター
一方、正中部はできるだけ避けた方がよいとされます。
ただし、急変時などは選ばざるを得ない場合もあります。
下記のように、正中部に穿刺するリスクや避ける理由を、改めて知っておきましょう。
- 肘を曲げないようにする必要があり、患者さんのADLを制限してしまう
- うっかり肘を曲げてしまったとき、留置針が折れるリスクがある
- 採血しやすい部位なので、検査が必要な時のために残しておきたい
コツ2:触って確かめる
2つ目のコツは、実際に触って確かめること。
狙うべきは「見える血管」より「触れる血管」です。
穿刺するのに良い血管は次のとおりです。
- まるくて太い(血管径が長い)
- 弾力がある
- まっすぐ(蛇行していない)
実際に触ってみて、「ぷにぷに」「コリコリ」とした弾力があるか確かめてみましょう。
逆に、虚脱した「ぺしゃん」としている血管は、扁平化して血管径が短く、針が血管を突き抜けてしまうリスクがあるので、避けるべき血管です。
★ポイント★
慣れないうちは、見えている血管を狙いがちですが、それよりも大切なのは、まるくて太い血管径の長さが保たれている血管かどうかです。触ってみて、手袋で感触がわかりづらい場合は、素手で確認しましょう。
コツ3:患者さんに聞く
3つめのコツは、患者さんに直接聞いてみることです。
ひと通り見て、穿刺するのに良い血管が見当たらなければ、よく穿刺される部位を患者さんに聞いてみましょう。
患者さんによっては、自分ではわからない場合もあります。
まずは「前に採血とか注射されたときのことって覚えてますか?」と聞いてみて、ある場合は「どこから刺されることが多いですか?」と段階を踏んで尋ねるとよいでしょう。
コツ4:血管を怒張させる
4つめのコツは、血管が見えづらい患者さんの場合に、穿刺部位への血流を増やし、血管を怒張させることです。
方法としては、
- 患者さんに手をぐっと握ってもらう
- 患者さんに手を心臓よりも下げてもらう
- 駆血帯を締める
などがあります。
駆血帯は、強く巻きすぎると血流が止まってしまい、怒張が不十分となります。逆に、ゆるすぎても怒張しません。
血管の怒張具合を見ながら、駆血帯の巻き加減を調整しましょう。
また、患者さんに手を握ってもらう場合は、指先からの血流がより増えるように、親指を中に入れて握ってもらいましょう。
コツ5:皮膚を引っ張る
5つめのコツは、周囲の皮膚を引っ張った状態で静脈をピンと一直線にし、挿入部位を安定させることです。
皮膚を引っ張る方法は2つあります。
- 1留置針を持っていない方の手の親指で、穿刺部位より手前の皮膚を末梢側へ軽く引っ張る方法
- 2留置針を持っていない方の手で腕を包み込むように持ち、軽く左右に引っ張る方法
手前に引っ張る方法では、まず指の腹で血管をくっと押さえ、そのまま血管をまっすぐにするイメージで引っ張ると、血管をしっかり固定できます。
注意点!
強く引っ張り過ぎないように注意しましょう。皮膚が弱い患者さんでは、スキンテア(摩擦やずれによる皮膚裂傷)を起こす可能性があります。
また、引っ張りすぎると、穿刺後に手を離し、引っ張っていた皮膚が元に戻る力で、留置針の位置がずれてしまうこともあります。
ちなみに、皮膚を引っ張らなくても、すっと刺せる血管もあります。
二股に分かれている血管(逆Y字型)の分岐部です。血管が皮膚組織に固定されていて動きにくいので、穿刺したとき、血管が逃げません。
血管が浮き出ている人で、逆Y字型の分岐部を見つけられたら、そこを狙いましょう。
おわりに
ルート確保がうまくいかなったときに大切なのは、うまくいかなかった原因を振り返ることです。そうすることで、次にトライするときの成功率がぐっと上がります。
また、誰かに代わってもらう場合には、「どんなふうにやってうまくいかなかったか」や「考えられる原因」をわかる範囲で伝えれば、代わってくれた人がゼロから考えずにすむので役に立ちます。
たとえば、
- 血管が虚脱して元気がなかった
- 血管がもろくて2回失敗した
- 穿刺できたけど、針が進まなかった
などと伝えるとよいでしょう。
さまざまなコツを駆使してもうまくできず、誰かに代わってもらうときは、つい落ち込んでしまうこともあるかもしれません。
しかし、誰でもうまくいかないときはありますし、血管との相性もあります。焦らず、次にトライしましょう。
看護roo!編集部 坂本朝子(@st_kangoroo)
参考文献
- 日本看護協会.特別企画 静脈注射の実施に関する指針.日本看護協会機関誌,55(8),2003,p.69-131.
- 全国訪問看護事業協会,訪問看護における静脈注射実施に関するガイドライン.2004,30p
- 道又元裕ほか監.末梢静脈路確保.看護がみえるvol.2 臨床看護技術.2018,p.66-74.
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