非結核性抗酸菌症|抗酸菌症③
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は非結核性抗酸菌症について解説します。
石井則久
国立療養所多磨全生園
非結核性抗酸菌症とは
定義・概念
らい菌、結核菌以外による皮膚抗酸菌症の総称である。
原因・病態
原因となる抗酸菌は水中、土中など広く自然界に存在し、外傷部位などに菌が付着することで病変を形成する。滅菌不十分な手術器具などに菌が付着していることもある。皮疹は手足、顔などの露出部に多発する。抗菌薬に対する感受性は比較的低い。
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診断へのアプローチ
臨床症状・臨床所見
多くは外傷後になかなか治癒しない皮疹として気づかれ、膿疱や痂皮、丘疹、結節、潰瘍など種々の病変を呈する(図1)。
とくにマイコバクテリウム・マリヌム感染症は水族館職員、熱帯魚愛好家など、水槽に入った魚に接する機会の多い人に発症しやすい。マイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)への感染によって起こるブルーリ潰瘍は、無痛性の潰瘍病変である。
検査
皮疹部からの塗抹検査とPCR検査がある。抗酸菌用培地(小川培地)を用い、37℃と25℃(室温)での培養を行う。感染源の同定が必要である。
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治療ならびに看護の役割
治療
おもな治療法
複数の抗菌薬内服で外来治療を行う。難治例や小病変の場合は、外科的切除も行われる。
マイコバクテリウム・マリヌム感染症では菌が高温感受性であるため、使い捨てカイロも使用される。
外来での感染対策は標準予防策で良い。局所はポビドンヨード消毒を用いる。
合併症とその治療法
改善傾向がない場合は、薬剤感受性試験や複数の治療法併用を考慮する。
治療経過・期間の見通しと予後
数ヵ月間の治療が一般的である。
看護の役割
治療における看護
抗菌薬の内服治療は数ヵ月間にわたるため、耐性菌出現予防のためにも中断や飲み忘れのないようにする。
フォローアップ
水槽の魚や24時間風呂などと関連して発症することがあるため、患者の職業や娯楽・趣味など日常生活の情報を収集し、感染源を発見するとともに、感染防止のための指導をする。
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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂