産褥期に活用できる母子保健制度

『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は産褥期に活用できる母子保健制度について解説します。

 

花原恭子
聖泉大学看護学部講師

 

 

育児休業給付金

労働者が申請することで育児休業中に得られる給付金のことである。

 

①対象者

・育児休業給付金は雇用保険の給付であるため、雇用保険の被保険者であり、休業開始日前の2年間に就業日数(賃金支払基礎日数)11日以上の月が12か月以上あれば受給資格を得られる(12か月ない場合でも、賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上の月が12か月以上あれば受給資格を得られる)。

 

給付期間中の条件

・育休中に支払われる1か月の賃金が休業前の8割未満であること。
・育休中でも就業は可能だが、就業日数は月10日以下(10日を超える場合でも、就業時間が80時間以下)であること(産後パパ育休も同様)。

・子どもが1歳になった時点で、以下の条件を満たせば、子どもが1歳6か月または2歳まで延長可能である。
○保育所等の申込を行っているがみつからない場合。
○子の養育予定者が死亡やけが、病気などで養育が困難である場合。
○離婚などで子の養育者と別居になった場合。
○新たな妊娠により6週間(多胎妊娠は14週間)以内に出産予定、または産後8週間を経過しない場合。
・子どもが1歳になるまでの期間。また、夫婦ともに育休を取得する「パパママ育休プラス制度」を利用する場合は、子どもが1歳2か月になるまで支給される(図1)。

 

図1 パパ・ママ育休プラス制度

パパ・ママ育休プラス制度

 

・1歳未満の子どもの場合、原則2回の育児休業の分割取得が可能である。
・産後パパ育休は、子どもの出生日から8週間までに最長4週間取得可能で、必要に応じて2回に分割することができる。
・通常の育児休業とは別の制度なため、育休の分割取得ができる。産後パパ育休は子が1歳になるまでに最大で4回分割して取得することが可能である。

 

②支給額
育児休業開始時の賃金日額×支給日数の67%(育児休業開始から6か月まで。6か月以降は50%)。通常は2か月ごとに受け取れる。

 

 

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育児休業手当金

育児休業を取得した公務員が、休業中に得られる給付金のこと。

 

①対象者

・育児休業を取得した公務員
・育児休業中の期間で、休業開始の日から子が1歳に達するまで支給される(保育所入所できないなどの特別の事情がある場合は、1歳6か月、それ以降も特別な事情に該当する場合は2歳まで延長支給される)。
・パパ・ママ育児プラス制度を利用した場合は、子が1歳2か月まで支給される。

②支給額
育児休業給付金と同じ。

 

 

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チャイルドシート購入費助成

次世代を担う乳幼児の交通安全対策および子育て支援対策として、チャイルドシートの購入費の一部を助成する制度。助成金額は市町村によって異なる。

 

チャイルドシートの義務化と着用率

幼児のチャイルドシート着用の義務化は2000(平成12年)4月1日の道路交通法改正によって定められた。警察庁と一般社団法人日本自動車連盟(JAF)の2018年の全国調査では、幼児全体では66.2%で、年齢別でみると1 歳未満は84.4%と高いが年齢層が上がると低下し、5歳では44.1%に落ち込み、いまだチャイルドシートの必要性が十分に理解されていない2)

 

 

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失業給付金の延長措置

妊娠・出産を機に退職した者の、失業給付金(失業手当て)の受け取りを最長3年間(受胎期間も含めると4 年間)延長できる特例措置。

 

①対象者

就業中雇用保険に加入し、妊娠・出産を機に退職し、育児が落ち着いた後に働く意思がある者。

 

②給付金

基本手当日額×支給日数

 

失業給付金

退職後に出産手当金や育児休業給付金がもらえない女性にとっては大きな生活支援となる。

 

 

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医療費控除

自分と生計をともにする配偶者や親族のために支払った医療費の所得控除を受けることができる。年間10万円(総所得金額等が200万円未満の者は総所得金額5%)を超えた場合は、確定申告時に税務署へ医療費控除として1年ごとに申請する。ただし、高額療養費として支給を受けた金額や出産育児一時金の補填代は除かれる。

 

対象となる医療費

・妊娠と診断されてからの定期健診や検査などの費用と通院費用
・出産で入院するときにタクシーを利用した場合のタクシー代
・入院費

 

 

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高額療養費

医療費の家計負担が重くならないよう、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1 か月で上限額を超えた場合、その超えた額が支給される(表1)。上限額は、年齢や所得に応じられている。加入先の医療保険者に1か月ごとに申請する。

 

表1 69歳以下の上限額3)

69歳以下の高額療養費上限額


①対象者

・高額医療費を支払い、1か月の医療費が自己負担限度額を超えた者。

 

 

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傷病者手当金

被保険者が、療養のため労務に服することができないときは、その日から連続3日間を含む4日以上の労務に服することができない期間、標準報酬日額の3分の2に相当する金額を支給される。

 

傷病者手当金

妊娠悪阻や切迫流産、切迫早産、怪我等で長期間休業する場合、保障を受けられる制度。

 

 

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出産扶助

困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して分娩介助、分娩前および分娩後の処置、脱脂綿やガーゼその他の衛生材料に対して金銭給付によって支給される。

 

 

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引用文献

1)厚生労働省:妊娠等を理由とする不利益取り扱いに関する調査の概要、2019年12月5日検索

2)尾保手正成:全ての座席のシートベルトの着用とチャイルドシートの使用の徹底、人と車、54(8):4~ 12、2018

3)厚生労働省保険局:高額療養費制度を利用される皆様へ、2019年12月27日検索

4)厚生労働省:平成30年度雇用均等基本調査(速報)、2019年11月21日検索

参考文献

 


 

本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版

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