胎児心拍数図|胎児心拍数モニタリング②
『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は胎児心拍数モニタリングのうち、胎児心拍数図について解説します。
立岡弓子
滋賀医科大学医学部看護学科教授
胎児心拍数図
胎児心拍数図(cardiotocogram:CTG)とは、胎児心拍数モニタリングと子宮収縮(陣痛)圧を経時的に記録したものである(図1、図2)。
胎児心拍数基線
①正常脈(normocardia):110~160bpm
②頻脈(tachycardia):160bpm以上
③徐脈(bradycardia):110bpm以下
基線の読み方
10分間の基線の平均を図3に示す。
胎児心拍数基線細変動
胎児心拍数基線細変動(baseline variability of fetal heart rate:FhR)は、1分間に2サイクル以上の胎児の心拍数の変動であり、振幅、周波数ともに規則性がない(図4)。Sinusoidal patternはこの細変動の分類には入れない。
細変動を振幅の大きさによって、以下の4段階に分類する。
①細変動消失(undetectable) :肉眼的に認められない
②細変動減少(minimal) :5bpm以下
③細変動中等度(moderate) :6~25bpm
④細変動増加(marked) :26bpm以上
基線細変動の読み方
ColumnSTV(short term variability)
胎児心拍数の1拍ごとの振幅を読む
LTV(long term variability)
60秒間の心拍数の波の差を読む
胎児心拍数一過性変動
一過性の胎児心拍数変動で、多くは子宮収縮、胎動などに関連して出現する。
①一過性頻脈(acceleration)
一過性の心拍数増加であり、心拍が15bpm以上、持続が15秒以上をいう(図5)。
一過性頻脈は、交感神経が優位な状態であり、ストレスに対する胎児の生体防御反応である。この所見が認められるということは、胎児の神経機能が発育し、健康状態が良好であることを示している。
VAS(vibro acoustic stimulation)
胎児は、20~40分程度で睡眠サイクルを変えるため、胎児睡眠サイクルの変化に伴う胎児心拍数パターンの違いがある。胎児がノンレム睡眠(sleep state)では、基線細変動が減少し、一過性頻脈を認めないことが多い。このような場合に、VAS(図6)を行い、胎児をレム期(active state)にすることで一過性頻脈の出現を確認することができる。
②一過性徐脈(deceleration)
・早発一過性徐脈(early deceleration)
子宮収縮に伴って規則的に反復する一過性徐脈で、子宮収縮の開始と同時に心拍数が低下し、子宮収縮の終わりとともに回復する(図7-a)。
・遅発一過性徐脈(late deceleration)
心拍数の低下が子宮収縮の開始よりも遅れて始まり、心拍数の最下点は子宮収縮のピークより遅れ、徐脈の回復が子宮収縮の終わりより遅い(図7-b)。
・変動一過性徐脈(variable deceleration)15bpm以上の心拍数減少が30秒以内の経過でみられ、回復に15秒以上2分未満かかるもの。子宮収縮と同時にみられることが多い(図7-c)。
・遷延一過性徐脈(prolonged deceleration)
持続時間の長い一過性の徐脈であり、2分以上の徐脈が持続し、10分以内に回復するもの。
妊娠末期のNSTの判断基準
①reassuring(安心できる)の判断基準の4条件
・心拍数基線が正常範囲にある。
・心拍数基線細変動を認める。
・一過性徐脈が認められない。
・胎動に伴う15秒以上、15bpm以上の一過性頻脈を20分間に2回以上認める。
② non-reassuring(安心できない)
・心拍数基線細変動の消失(図7-d)。
・遅発一過性徐脈を認める。
妊娠中にみられる正弦様波形(sinusoidal pattern)
正弦様波形(図8)の定義を以下に示す。
①心拍数基線:120~160bpm
②振幅:5~15bpm
③周期:2~5cpm(cycle per minute)
④STV:減少か低下
⑤一過性頻脈:少ない
⑥基線から上下への正弦様波形:正弦様波形は、Rh 不適合妊娠による胎児貧血例、子宮内感染、胎児ジストレス症例に認められやすい。
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本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版