内診の介助
『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は内診の介助について解説します。
吉川芙雪
滋賀医科大学医学部看護学科助教
産婦人科診察(内診)の介助
内診とは、医師が指や専用の器具などを挿入して、腟や子宮の状態を観察することをいう。これは、妊婦にとって羞恥心・不安感、緊張感の強い診察である。妊婦が不安や緊張していることを理解し、不安や緊張を和らげリラックスして診察を受けられるように、医師の診察には、必ず看護師・助産師が付き添う必要がある。
わが国では内診台がカーテンで仕切られていることが多く、その場合、妊婦が自分に行われる処置がみえないために、不安を感じやすい。患者さんの希望によりカーテンを開ける場合もある。カーテンがないと、医療者と直接顔を合わせるために、羞恥心を感じやすい。どちらの場合も、妊婦が少しでもリラックスできるように、内診台を上げる際や処置を行う際には必ず声をかけ、説明しながら介助を行う。
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必要物品
バスタオルなどの掛け物、ティッシュペーパー、腟鏡、経腟超音波、プローブカバー、エコーゼリー、検査キット(腟培養など)、鑷子、綿球やガーゼ、ライト、消毒・潤滑用の生理食塩液を準備する(図1、図2)。
POINT
クスコなどは滅菌されており、不潔とならないように介助しやすいように並べておく。生理食塩液は常温もしくは温めておく。
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介助の実際
1診察することを説明し、排尿をすませてもらう。
POINT
膀胱が充満していると子宮の大きさや位置が正確に診察できない。
2妊婦の氏名を確認し、妊婦の取り間違えを防止する。
3下半身の衣類を脱ぐ、もしくはスカートの場合は下着のみを脱ぎ、スカートは内診台に乗るときにめくりあげてもらうように促す。
4内診用のシーツを敷き、内診台に座るように促す。
5足台に妊婦が足を乗せたことを確認し、バスタオルをかけるもしくは妊婦自身にバスタオルをかけて内診台に座ってもらう(図3)。
6内診台が動くことを説明し、内診台を上げ、砕石位にし、下腹部のバスタオルをずらす(図4)。下半身の露出を少なくし、羞恥心に配慮する。カーテンがある場合、内診台が動く際にカーテンも巻き込まれるため、持ち上げるなど配慮を行う。
7診察時の説明をする。深呼吸を促して腹部・下肢の力を抜かせ、股関節を十分に開く。
POINT
緊張して力が入っていると診察がスムーズに行えないことを説明する。
カーテン越しに診察を行う場合、妊婦は何が行われているのかわからず不安になるため、声掛けを行う。
8ライトが外陰部にあたるように調整する。
9内診の介助を行う(図5)。医師に腟鏡、鑷子、綿球、検査キットなどの必要な器具を渡す。
10内診終了後、外陰部や臀部についた水分をティッシュペーパーなどで取り除く。
11内診台の高さをもとに戻し、診察が終了したことを伝える。
12内診台や診察で使用した器具を片づける。内診台用シーツは患者ごとに交換する。
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引用・参考文献
1)森恵美編:助産師基礎教育テキスト2013年版、第4巻、妊娠期の診断とケア、p.48、p.118、日本看護協会出版会、2013
2)我部山キヨ子、武谷雄二:助産学講6、助産診断・技術学Ⅱ[1]妊娠期、p.173、医学書院、2012
3)医学情報科学研究所編:病気がみえる vol.10、産科、第4版、メディックメディカ、2018
4)平澤美惠子、村上睦子監修:写真でわかる助産技術アドバンス-妊産婦の主体性を大切にしたケア、安全で母子に優しい助産のわざ、p.29、インターメディカ、2016
5)平澤美惠子、村上睦子監修:写真でわかる助産技術アドバンス-妊産婦の主体性を大切にしたケア、安全で母子に優しい助産のわざ、p.27、インターメディカ、2016
本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版