妊娠初期の胎児の成長と能力
『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は妊娠初期の胎児の成長と能力について解説します。
立岡和弘
静岡市立清水病院産婦人科長
胎芽の発育
妊娠が成立すると、子宮内に胎嚢(たいのう/GS)とよばれる内部に羊水を含み、胎芽を含む袋が出現する。
妊娠3週目に入ると胎芽が分化し、内胚葉(ないはいよう)、外胚葉(がいはいよう)、中胚葉(ちゅうはいよう)を生じる。胚葉は、分裂増殖して器官形成をしながら発育する(図1)。
胎芽が成長し、胎児となるため、妊娠8週までを胎芽期、9週以降を胎児期という。
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正常妊娠
正常妊娠では、胎嚢は妊娠4週で80%、妊娠5週ではほぼ100%確認され、妊娠6週でGS内に卵黄嚢と胎芽、心拍が確認される(図2)。
図2 妊娠6週超音波画像
妊娠8週までを胎芽といい、妊娠9週以降を胎児という。(図3、図4、図5)
memo:頭殿長の発達
頭殿長は妊娠7週で約1cm。以降、1cm/週の割合で大きくなる。
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多胎妊娠
多胎妊娠では、妊娠初期に膜性診断を行うことが大切である。妊娠6週以降で、子宮内に胎嚢が2個確認されれば2絨毛膜性双胎と診断し(図6)、胎嚢内に2個の胎芽、胎児が認められれば1絨毛膜性双胎と診断する(図7)。
1絨毛膜性双胎では、さらに妊娠7週から10週で、両胎児がそれぞれ羊膜で包まれていれば1絨毛膜2羊膜性双胎、羊膜が胎児間になければ1絨毛膜1羊膜性双胎と診断する。
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NT(後頚部の浮腫)の測定
妊娠11週から14週までの胎児矢状断面で超音波の拡大倍率を最大として、首のうしろの低輝領域(黒くみえる)の厚み(mm)をNT(後頚部の浮腫:Nuchal translucency)という(図8)。NTは14週以降では自然に消退する。母体年齢とNTにより染色体異常の確率が算出されるが、おおむねNTが3mm以上の場合には、染色体異常の可能性がある。
染色体異常で最も多いのは、21番目の常染色体が1本多いタイプ(ダウン症)である。ダウン症のスクリーニング法としてNTを超音波検査で測定する方法がある。
また、妊娠初期に診断可能な胎児形態異常を表1に示す。
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本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版