体温測定Q&A | いまさら聞けない!ナースの常識【32】

毎日の業務の中で触れているけど、『いまさら聞けない』ことってありませんか?

知っているつもりで実は説明できない基礎知識や、ちょっと気になるけど調べるほどでもないな、なんてこと。

そんな看護師の素朴な疑問を、元看護師ライターがこっそり教えます。

 

第32回 「体温測定Q&A」

 

 

【Q1】体温計の種類によって、計測時間が違うのはなぜ?

【Q2】なぜ朝、検温をしなくちゃいけないの?

【Q3】体温がいつもより高いのに温めることがあるのはなぜ?

【Q4】発熱とうつ熱の違いってなに?

 

 

【Q1】体温計の種類によって、計測時間が違うのはなぜ?

【A】体温計には、実測式予測式がある。

 

●実測式・・・その名の通り、数分間かけて平衡温(口腔や腋窩へ体温計を入れてから、体の内部の温度と同じくらいの温度になった状態)になるまで測定するもの。

 

●予測式・・・ある程度の時間(数秒から数十秒)で体温が上昇するパターンから、平衡温となるであろう温度を予測して測定するもの。

 

水銀体温計は実測式の代表だが、電子体温計でも実測式のものがある。予測式は測定時間が短く、小児などじっとしていられない患者に対してとても有効だが、より正確な体温を測定したい場合は、実測式を使用する。

 

【ワンポイントアドバイス!】

口腔式や鼓膜式など、予測式の体温計はたくさんあるが、その形状や(体温計に内臓されているコンピュータの)計算方法などから、いずれも測定に適した部位が決まっている。体温計を選択する時は、測定部位や測定したい状況により、適切な体温計を選択する必要がある。

 

●口腔式=口腔内の体温(口腔温・舌下温)を測定する。より身体の中心に近い温度が測定できるため、基礎体温などの計測に強み。しかし、実測式の場合、完全な平衡温度に達するには5分以上かかり、外気温の影響を受けないようしっかりくわえる必要もあるため、乳幼児や安静が保てない患者さんの場合は、測定が難しくなる。

 

●鼓膜式=鼓膜の温度を測定する。身体の中心温度の中でも、特にに近い体温が測定可能。数秒で計測できるため、安静を保ちにくい乳幼児や、救急現場などで早急に測定したい時などは便利だが、腋窩温よりはやや高く測定され、挿入角度によっては誤差が出やすくなる。

 

【Q2】なぜ朝、検温をしなくちゃいけないの?

【A】安静時である朝一番の体温が、他の要素によるばらつきの影響を最も受けないため。起床してからまだ何も活動していない時間帯に測定すると、患者さんのその日の基準となる体温(基礎体温)を測定することができる。

 

食事・運動・入浴のほか、寒冷暴露(寒さに晒されること)や精神面での変化も体温の変化に影響を与える。健常者の場合でも、安静時と活動時では1℃近く変わることがある。

 

【Q3】体温がいつもより高いのに温めることがあるのはなぜ?

【A】発熱のパターンは、体温上昇期→極期(最も発熱している時)→解熱期という流れ。四肢の冷感などがみられる場合は、冷罨法ではなく温罨法によって体温を上げきってしまい、早く解熱期を迎えるようにする。

 

それぞれのターンにおけるおもな症状

体温上昇期の症状には、基礎代謝の上昇とともに悪寒やふるえが生じたり、鳥肌が立つなどがある。体温が最も上がる極期には熱感がある。また、体温が下がり始める解熱期には基礎代謝が下がり、発汗がみられる。

 

【Q4】発熱とうつ熱の違いってなに?

【A】体温調節のレベル(セットポイント)に関係が深い。発熱は、感染や発熱する原因疾患により、体温調整中枢におけるセットポイントが高値に置き換えられた状態です。この場合は(発熱の原因にもよりますが)解熱剤が有効とされます。

 

一方、うつ熱は、体熱の産生が体熱の放散を上回った時に、異常な体温の蓄積が起こった状態をさす。本来、人は体熱を産生するとともに、放散することで体全体の体温を調整している。しかし、気温や湿度が異常に高い環境、激しい運動の後などでは、体熱を放散することができなくなり、体の中に熱が溜まっていく(蓄積する)と、うつ熱の状態になる。同じ高体温の状態でも、うつ熱の場合、解熱剤は有効の限りではない。

 

夏になると、ニュースでもよく話題になる熱中症。これは、日射病熱痙攣(けいれん)・熱疲労熱射病の総称だが、実はうつ熱の一種。うつ熱や体温調節障害は熱疲労の原因となり、多臓器障害を合併し、死に至る場合もある。この場合はまず体熱を放散させるため、全身を濡らし、気化熱を利用しながら体を冷ますなどの処置が必要となる。

 

【岡部美由紀】

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