呼吸器疾患の放射線療法

『本当に大切なことが1冊でわかる呼吸器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は呼吸器疾患の放射線療法について解説します。

 

 

長島康恵
さいたま赤十字病院放射線・内視鏡センター看護係長
がん放射線療法看護認定看護師・日本核医学会認定核医学診療看護師

 

 

どんな治療?

放射線療法は、放射線を使った治療です。基本的にがんに適応されます。

 

memo:放射線

レントゲン博士が1895年に発見した電磁波。目で見たり、感じたりすることはできない。物質(細胞)を変質(電離・励起)させることができ、その作用を治療に用いる。

 

放射線療法で用いる放射線にはX線γ(ガンマ)線電子線陽子線重粒子線などがあります。最も一般的な治療は、装置のスイッチを押すとX線が発生する外照射です。

 

そのほか、放射線を出す放射性同位元素を身体に入れ、内側から放射線を照射する密封小線源治療や、RI内用療法という方法もあります。

 

memo:RI内用療法

放射性核種による治療で、使用する核種が特定の臓器に選択的に取り込まれることを利用して、腫瘍の近傍からβ線もしくはα線を照射する。
131I( ヨード):甲状腺機能亢進症と甲状腺がんに使用(β線)
89Sr(ストロンチウム):転移性骨腫瘍の疼痛コントロール目的(β線)
90Y( イットリウム):悪性リンパ腫に適応あり(β線)
223R(ラジウム):去勢抵抗性前立腺がん骨転移に適応あり(α線)

 

放射線療法の利点と欠点は表1のとおりです。

 

表1 放射線療法の利点・欠点

放射線療法の利点・欠点

 

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放射線療法のしくみ

X線を使用する外照射は、一定線量を患部に照射することでDNAを損傷させ、がん細胞を死滅させます(図1)。

 

図1 放射線療法のしくみ

放射線療法のしくみ

 

放射線が通り抜けるとき、患部周辺のがんではない正常細胞にも影響が出ます。その影響を有害事象といいます。

 

放射線療法の線量は、吸収線量(Gy:グレイ)で表示します。


 

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肺に対する放射線療法の実際

放射線療法の流れは図2のとおりです。

 

図2 放射線療法の流れ

放射線療法の流れ

 

治療計画用のCT撮影を行います。肺は動く臓器なので、CTで肺の動きを確認しながら、治療部位を特定します。

 

必要に応じて、治療部位の目印となる金マーカーを留置することがあります。金マーカーは気管支鏡で留置します。患部に近い位置に3個程度、気管支にポンと置いてくるイメージです。

 

原発性肺がんで局所進行性である場合は、化学放射線療法を行うことが推奨されています。放射線療法と化学療法を同時に開始する方法が一般的です。

 

最近の肺がん治療には、化学療法のほかに免疫チェックポイント阻害薬分子標的治療薬も使用されています。放射線療法と併用しないほうがよい薬剤や、してはいけない薬剤があるので、注意しましょう。

 

放射線照射の種類は表2のとおりです。

 

表2 放射線照射の種類

放射線照射の種類

 

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看護師は何に注意する?

放射線療法に対する不安の軽減

原爆や原子力発電所の事故の影響で、放射線に対する不安が強い患者さんもいます。患者さんには、放射線療法の影響は照射部位以外には現れないことや、放射線量は有害事象が回復する程度にとどめるように調整して行うことを説明します。不安の強い患者さんには声をかけて、医師からの説明を聞いてどう感じたか聞きましょう。

 

 

照射野の確認

放射線療法では、放射線が通り抜ける部位に有害事象が発生します。したがって、どの部位に照射されているかがわかると、ケアのポイントがわかります。

 

 

有害事象の発生時期

正常組織の放射線に対する感受性によって、有害事象の発生時期が変わります(表3)。おおむね2~3週間(放射線量では20~30Gy)経過してから発生します。

 

表3 放射線照射の有害事象

放射線照射の有害事象

 

有害事象の予防とケア

照射部位を摩擦などで刺激しないことが大前提ですが、栄養摂取と清潔保持(感染予防)も基本となります。

 

間質性肺炎COPDなどでもともと呼吸機能が低下している場合は、放射線療法の影響で症状が増悪する可能性があります。特に間質性肺炎では放射線療法により急性増悪を起こすことがあり、放射線療法の適応も含め、慎重な対応が必要です。呼吸困難などの自覚症状には早めに気づけるようにしましょう。

 

同時化学放射線療法では治療効果が高まるとともに、有害事象が起こりやすくなります。炎症や感染に対する対処方法を患者さんに早めに話しておきましょう。

 

有害事象は、放射線療法終了後も続きます。2週間~1か月経過すると落ち着いてきますが、それまでの間に悪化しないようケアを継続し、次の治療に備えて無理のない生活を勧めましょう。

 

 

治療効果の判定

治療効果は1か月以上経ってから現れます。場合によっては半年かかることもあります。自覚症状の有無と検査結果などからわかりますが、効果判定は医師に依頼して確認しましょう。
 

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器』 編集/さいたま赤十字病院看護部/2021年3月刊行/ 照林社

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