髄膜炎

『本当に大切なことが1冊でわかる脳神経』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は髄膜炎の検査・治療・看護について解説します。

 

三嶋麻実
東海大学医学部付属八王子病院看護部 集中ケア認定看護師
田中雄也
東海大学医学部付属八王子病院看護部副主任 救急看護認定看護師
植松 恵
東海大学医学部付属八王子病院看護部 救急看護認定看護師

 

 

髄膜炎とは?

髄膜炎は、脳神経系の感染症の一種です。

 

細菌やウイルスなどによって脳神経が感染を起こした状態です。感染により頭痛・発熱を生じ、意識障害、けいれんなどの症状に注意が必要です。

 

脳神経系の感染症は生じる部位によって疾患名が異なり、最も発症率が高いのは髄膜炎です。

 

髄膜炎とは、脳を保護する軟膜、クモ膜、硬膜の3層(図1)のうち、軟膜、クモ膜に炎症が起きた状態をいいます(図2)。初期治療が重要であり、髄膜刺激症状などの特徴的な症状を早期に発見し、緊急対応を行う必要があります。

 

図1髄膜

図1髄膜

 

図2髄膜炎の病態

図2髄膜炎の病態

 

髄膜炎の分類

髄膜炎の分類は、原因によって主に5つに分類されます(表1)。

 

表1髄膜炎の分類

表1髄膜炎の分類

 

そのなかでも細菌性髄膜炎は、初期治療が患者さんの予後、転帰にかかわってくるため緊急対応を必要とする疾患です。

 

細菌性髄膜炎の場合、原因となる菌が年齢によって異なる傾向があります。

 

 

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患者さんはどんな状態?

発熱項部硬直意識障害が髄膜炎の三徴候です。

 

発熱、頭痛、嘔吐などで発症し、進行すると意識障害、けいれんを呈します。

 

発熱は頭痛とともに多くの症例に認められます。しかし、高齢者や免疫不全の状態では、定型的な症状が出現せず高熱を認めない場合(体温38℃未満)もあるため、注意が必要です。

 

髄膜刺激症状がみられることがあります。髄膜自体の刺激や、急激な頭蓋内圧亢進などにより生じる症状で、項部硬直ケルニッヒ徴候ブルジンスキー徴候ジョルトアクセンチュエイションJolt accentuation)があります(図3)。

 

図3髄膜刺激症状

図3髄膜刺激症状

 

 

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どんな検査をして診断する?

炎症反応の確認や、原因となる菌やウイルスなどを調べるために、血液検査、脳脊髄液検査、画像検査が行われます。

 

血液検査

血液検査では炎症反応の数値が大切です。一般的な感染症同様に、白血球の増多CRP上昇を認めます。

 

脳脊髄液検査

確定診断には脳脊髄液検査が必須です(表2)。同時に髄液培養により原因菌の同定を行います。

 

表2脳脊髄液検査所見の特徴

表2脳脊髄液検査所見の特徴

★1 キサントクロミー日光微塵

 

脳脊髄液検査は、採取後すみやかに提出します。採取後、時間経過とともに細胞数が変化するためです。正確な治療・診断を行うために注意が必要です。

 

検査前、検査中、検査後のバイタルサインとともに、初圧、終圧、性状(無色透明・混濁など)の観察も重要です。

 

memo:初圧と終圧

髄液採取前に測定する髄液圧を初圧、髄液採取後に測定する髄液圧を終圧という。初圧が高値を示す場合は髄膜炎を考える。終圧が低値を示す場合は、低髄圧症候群を考える。

 

細菌性髄膜炎では、他の髄膜炎と比較し、細菌による糖の消費が大きく、著明な糖の低下が生じるため、髄液糖/血糖比が重要なポイントになります。0.6以下が異常値であり、0.4以下になると細菌性髄膜炎を強く疑う指標になります。

 

脳脊髄液検査が施行困難な場合は、血液培養が重要となります。

 

画像検査

髄膜炎が強く疑われる場合は、MRI検査が第一選択となります。

 

造影剤を使用したほうが合併症病変の検出にもすぐれるため、可能な限り造影MRI検査を行います(図4)。

 

図4髄膜炎のMRI画像

図4髄膜炎のMRI画像

 

 

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どんな治療を行う?

抗菌薬の投与と、対症療法が中心です。

 

原因菌が不明な場合、抗菌薬は成人(16~50歳未満)ではカルバペネム系を、50歳以上の場合は、アンピシリン、バンコマイシンおよび第三世代セフェム系抗菌薬(セフォタキシムまたはセフトリアキソン)を使用することが多いです。

 

抗菌薬投与直前に副腎皮質ステロイドを併用する場合もあります。

 

 

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看護師は何に注意する?

髄膜炎は、意識障害けいれんが出現することが多く、急激な変化や重篤化を起こしやすい疾患です。発熱や意識障害、項部硬直などの症状があり髄膜炎が疑わしい場合は、患者さんの全身管理に努めながら、並行して迅速な検査と治療の早期介入が最も大切になります。

 

けいれん発作への準備

けいれんの出現を念頭において神経学的所見をしっかり観察します。

 

けいれんが出現した際は、酸素や薬剤の投与が行われるため、酸素投与や吸引、薬剤の準備をしておきます。

 

抗けいれん薬は金庫管理薬が多いため、けいれん出現時は慌てないよう、金庫管理薬の使用方法など施設に合わせた手順を確認しておきます。けいれん発作時を想定して、使用するときのシミュレーションを行っておくことが大切です。

 

けいれんによる意識障害や薬剤の鎮静作用により、呼吸状態が悪化する可能性があります。バッグバルブマスクだけでなく、気管挿管の可能性も視野に入れ、必要時に使用できるよう準備しておきます。

 

けいれん発作への対処

けいれんが出現した際、看護師は医師と連携し、けいれん様式の観察、時間管理を含めた迅速な対応が求められます。焦らずにまずは人を呼びましょう。

 

その後、けいれんが出現した部位や前駆症状の有無・様式(間代発作強直間代発作強直発作)・持続時間を、バイタルサインを測定しながら観察します(図5表3)。

 

図5けいれん発作の種類

図5けいれん発作の種類

 

強直間代発作

1回の発作で間代発作と強直発作を起こします。

 

表3けいれん発作時に使用する薬剤

表3けいれん発作時に使用する薬剤

 

 

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看護のポイント

重篤化すると脳が不可逆的なダメージを受けるため、早期に発見し対処することが重要です。頭蓋内圧亢進症状の出現に注意して、バイタルサインや神経症状を観察します。 また、けいれん発作時に迅速な対応ができるよう準備しておくことも大切です。

 

 

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感染症の看護の経過

感染症の看護を経過ごとにみていきましょう(表4-1表4-2表4-3)。

 

看護の経過の一覧表はこちら。

 

表4-1感染症の看護の経過 発症から入院・診断

表3-1脳炎・抗NMDA受容体脳炎の看護の経過 発症から入院・診断

 

表4-2感染症の看護の経過 入院直後、急性期

表3-2脳炎・抗NMDA受容体脳炎の看護の経過 入院直後、急性期

 

表4-3感染症の看護の経過 一般病棟、自宅療養(外来)に向けて

表3-3脳炎・抗NMDA受容体脳炎の看護の経過 一般病棟、自宅療養(外来)に向けて

 

表4感染症の看護の経過 一覧

横にスクロールしてご覧ください。

 

表3脳炎・抗NMDA受容体脳炎の看護の経過 一覧

 

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経』 編集/東海大学医学部付属八王子病院看護部/2020年4月刊行/ 照林社

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