脳膿瘍
『本当に大切なことが1冊でわかる脳神経』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は脳膿瘍の検査・治療・看護について解説します。
田中雄也
東海大学医学部付属八王子病院看護部副主任 救急看護認定看護師
植松 恵
東海大学医学部付属八王子病院看護部 救急看護認定看護師
三嶋麻実
東海大学医学部付属八王子病院看護部 集中ケア認定看護師
脳膿瘍とは?
脳膿瘍は、脳神経系の感染症の一種です。
細菌やウイルスなどによって脳神経が感染を起こした状態です。感染により頭痛・発熱を生じ、意識障害、けいれんなどの症状に注意が必要です。
脳神経系の感染症は生じる部位によって疾患名が異なります。最も発症率が高いのは、髄膜炎です。
脳膿瘍は、ブドウ球菌、緑膿菌、レンサ球菌などの化膿菌の感染により、脳実質内に膿がたまった状態です(図1)。
重篤な場合は脳ヘルニアを引き起こすため、頭蓋内圧亢進症状に注意します。
発症機序は、直接波及(約60%)と血流感染(約25%)に分かれます。
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患者さんはどんな状態?
感染により発熱します。
頭蓋内の病変のため、意識障害、片麻痺、失語、けいれんなどの脳の部位に合わせた局所神経症状が現れます。
重篤な場合は脳ヘルニアを引き起こします。クッシング現象(図2;血圧上昇、徐脈、うっ血乳頭)、または循環動態や呼吸状態に注意して観察しましょう。
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どんな検査をして診断する?
造影CTや造影MRI検査を行います。造影MRIで脳腫瘍との区別ができます(図3)。
確定診断は、内容物を採取して病原体を確認します。
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どんな治療を行う?
保存的治療か外科的治療かの選択は、膿瘍が単発なのか多発なのかの病巣状態のほか、患者さんの状態によって判断されます(表1)。
★1 ドレナージ
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看護師は何に注意する?
感染が主体のため、発熱への対応を行い、熱型に十分注意します。
けいれん発作が起こることもあるため、神経症状の増悪に注意し、迅速に対応できるよう準備しておきます。
脳ヘルニアの徴候として、瞳孔不同の出現に注意します。また、脳ヘルニアと脳室穿破の徴候として、意識レベルの低下に注意して観察を行います。
死亡率は15%程度といわれています。重篤な疾患であることを本人、家族が理解しているかを確認します。
全身症状が重篤な場合は、褥瘡や肺二次合併症などの予防に努めます。
memo:脳膿瘍の後遺症
治癒しても30~50%で症候性てんかん、神経脱落症状、行動変容などの後遺症を残す可能性がある。
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看護のポイント
重篤化すると脳が不可逆的なダメージを受けるため、早期に発見し対処することが重要です。頭蓋内圧亢進症状の出現に注意して、バイタルサインや神経症状を観察します。 また、けいれん発作時に迅速な対応ができるよう準備しておくことも大切です。
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感染症の看護の経過
感染症の看護を経過ごとにみていきましょう(表2-1、表2-2、表2-3)。
看護の経過の一覧表はこちら。
表2-3感染症の看護の経過 一般病棟、自宅療養(外来)に向けて
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経』 編集/東海大学医学部付属八王子病院看護部/2020年4月刊行/ 照林社