皮膚筋炎(DM)・多発性筋炎(PM)
『本当に大切なことが1冊でわかる脳神経』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は皮膚筋炎(DM)・多発性筋炎(PM)の特徴や検査について解説します。
小川和之
東海大学医学部付属八王子病院看護部主任 認知症看護認定看護師
皮膚筋炎(DM)・多発性筋炎(PM)とは?
皮膚筋炎(DM;dermatomyositis)および多発性筋炎(PM;polymyositis)は、原因不明の炎症性疾患です。骨格筋の障害をはじめ、全身の臓器病変を合併することが多い自己免疫疾患です。
症状が骨格筋および内臓にとどまるものを多発性筋炎、それに加えて皮膚症状を伴うものを皮膚筋炎と呼びます。
骨格筋の障害は数週間から数か月にわたって進行し、主に体幹や四肢近位筋、頸筋、咽頭筋などの筋力低下をきたします。
女性に多く、女性:男性=3:1となっています。
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患者さんはどんな状態?
皮膚筋炎・多発性筋炎の症状は図1のとおりです。
筋症状は、上下肢の近位筋と咽頭・喉頭筋群が好発部位です。
筋肉痛・筋力低下が自覚症状としてあるほか、上肢の挙上や、立ち上がりが難しいこともあります。そのほか、関節痛、嚥下困難や、心筋障害、間質性肺炎が生じることもあります。
皮膚筋炎では、ゴットロン徴候、ヘリオトロープ疹などの特徴的な皮膚症状がみられます。
memo:ゴットロン徴候
手指、肘関節や膝関節外側に生じる、がさがさした紅斑。
memo:ヘリオトロープ疹
上眼瞼に生じる、腫れぼったい紅斑。
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どんな検査をして診断する?
全身の症状のほか、徒手筋力検査(MMT)、血液検査、筋電図検査を行い、以下の皮膚筋炎・多発性筋炎の診断基準に基づいて診断します(表1)。
難病情報センターホームページ(2020.2.25アクセス)より引用
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どんな治療を行う?
基本は副腎皮質ステロイドによる薬物治療です。ステロイド単独では治療が困難な場合や、ステロイドの量を減らしたい場合は、免疫抑制薬が併用されることもあります。
慢性期の多発性筋炎にステロイドを用いると、ステロイドミオパチーが生じることがあります。ステロイドミオパチーの場合、ステロイドを減量・中止すると尿クレアチニンは減少しますが、多発性筋炎の悪化・再燃の場合は尿クレアチニンは増加します。
memo:ステロイドミオパチー
副腎皮質ステロイドの投与によって生じた、近位筋優位の筋力低下のこと。
筋力低下の進行防止には、リハビリテーションが重要です。
皮疹には外用薬を用います。
感染症や骨壊死・骨粗鬆症などの治療に関連した合併症の適切なコントロールが重要です。
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看護師は何に注意する?
肺や心臓にも病変が及ぶことがあり、間質性肺炎や心筋障害に注意が必要です。
頸部に炎症が起こると、嚥下障害や構音障害にも及ぶため、食事状況にも注意します。
特に皮膚筋炎では悪性腫瘍を合併しやすく、治療開始時からその後2年間程度は悪性腫瘍の有無を調べる必要もあります。そのため、患者さんの訴えに留意しながら全身状態や症状を観察することが重要となります。
副腎皮質ステロイドを使用するため、感染予防などが重要です。規則正しい生活をし、十分な睡眠をとることと、手洗いやうがいなどを行うよう指導します。
筋力の再生にはリハビリテーションも必要ですが、過度なリハビリは増悪につながる可能性もあるため注意します。
皮膚症状は紫外線により増悪するため、外出時に日光を避ける工夫も行う必要があります。
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経』 編集/東海大学医学部付属八王子病院看護部/2020年4月刊行/ 照林社