重症筋無力症(MG)

『本当に大切なことが1冊でわかる脳神経』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は重症筋無力症(MG)の検査・治療・看護について解説します。

 

小川和之
東海大学医学部付属八王子病院看護部主任 認知症看護認定看護師

 

 

重症筋無力症(MG)とは?

重症筋無力症(MG;myasthenia gravis)は、神経筋接合部が自己抗体により破壊され、神経から筋への神経伝達が障害される自己免疫疾患です(図1)。

 

図1重症筋無力症の病態と症状

図1重症筋無力症の病態と症状

 

 

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患者さんはどんな状態?

筋力低下(易疲労性)、夕方の症状増悪(日内変動)などを特徴とします。

 

眼瞼下垂、複視、四肢・体幹の筋力低下、構音障害、咀嚼障害が生じます。一般的には眼瞼下垂、複視が初発症状となることが多くみられます。また、筋力低下よりも嚥下障害や構音障害が目立つこともあります。

 

重症例では呼吸筋麻痺が起こります。

 

急激な筋力低下呼吸困難をきたす、クリーゼという状態になることがあります。

 

胸腺腫(胸腺〈図2〉の腫瘍)、甲状腺機能亢進症を合併症することがあります。

 

図2胸腺

図2胸腺

 

 

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どんな検査をして診断する?

血液検査を行い、アセチルコリン受容体(AChR;acetylcholine receptor)抗体、筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK;muscle specific tyrosine kinase)抗体が陽性であれば、重症筋無力症と診断されます。

 

低頻度反復刺激誘発筋電図、単線維筋電図で、神経筋接合部障害を示す生理学的所見があるか確認します。

 

テンシロン試験(エドロホニウム試験;図3)で、エドロホニウム塩化物(アンチレクス®)を静注し、眼瞼下垂の改善がみられるかどうか確認します。

 

図3テンシロン試験(エドロホニウム試験)

図3テンシロン試験(エドロホニウム試験)

 

症状の程度は、MGFA臨床分類(表1)を用いて判断します。

 

表1MGFA(Myasthenia Gravis Foundation of America)臨床分類

表1MGFA(Myasthenia Gravis Foundation of America)臨床分類

 

 

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どんな治療を行う?

軽症例や眼筋型では、対症的に抗コリンエステラーゼ薬を用います。ただし、クリーゼに注意が必要です。クリーゼが発症した場合は、ただちに気管挿管などの処置を行います。

 

全身型では、胸腺腫を合併していれば摘除術を行い、その後ステロイド治療を行います。最近では副作用の多い長期の経口ステロイド治療を避け、ステロイドパルス療法や免疫グロブリン大量静注療法などによりコントロールする方法も用いられています。

 

 

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看護師は何に注意する?

症状の観察

眼瞼下垂、複視の程度や増悪の時間帯、嚥下障害、構音障害、呼吸障害、呼吸音を確認します。

 

筋力低下については、徒手筋力検査(MMT)などで評価するほか、動きが悪くなる時間帯、疲労の程度などについて確認します。

 

日常生活援助

筋力の低下により思うように動けない状況であるため、多くのADLに援助が必要となります。

 

入院中はナースコールを押すことも難しいため、設置方法や押せる工夫を検討します。

 

 

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退院後の経過と注意点は?

完治が困難な疾患であるため、内服薬によるコントロールをしながら症状に合わせて日常生活を送ります。

 

ステロイドによる薬物治療では、症状に合わせて内服する量を調整します。患者さんが適切な服薬行動により社会生活を継続できるよう、看護師は、服薬指導や日常生活指導を続けていくことが大切です。

 

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経』 編集/東海大学医学部付属八王子病院看護部/2020年4月刊行/ 照林社

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