筋ジストロフィー
『本当に大切なことが1冊でわかる脳神経』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は筋ジストロフィーの検査・治療・看護について解説します。
小川和之
東海大学医学部付属八王子病院看護部主任 認知症看護認定看護師
筋ジストロフィーとは?
筋ジストロフィーは、骨格筋の変性・壊死、筋力の低下を生じる筋疾患の総称です(図1)。
難病情報センターホームページ(2020.2.25アクセス)より引用
筋ジストロフィーには、デュシェンヌ(Duchenne)型、ベッカー(Becker)型、肢帯型(LG型;limb-girdle型)、顔面肩甲上腕型(FSH型;facioscapulohumeral型)などいくつかの種類があります。
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患者さんはどんな状態?
筋力の低下により、運動機能など各機能に障害が起こります。
memo:把握性ミオトニア
手を握ると開きにくくなる症状のこと。
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どんな検査をして診断する?
血液検査、筋電図検査、CT、MRI、遺伝子検査などを行います(表2)。
筋生検による病理学的特徴から神経原性、筋原性の鑑別ができます。
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どんな治療を行う?
筋ジストロフィーは、いずれの病型においても根本的な治療法はありません。リハビリテーションによる機能維持、補助呼吸管理や心臓ペースメーカなどの対症療法を行います。
デュシェンヌ型では、副腎皮質ステロイドにより歩行期間の延長、呼吸機能の維持が可能となります。
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看護師は何に注意する?
食事
咳嗽反射の低下により誤嚥を起こす可能性があり、食事中も見守りや吸引がすぐにできる準備が必要です。また、状態に応じて食事形態を工夫し、経口摂取が困難な場合は、経管栄養なども検討します。
排泄
筋力低下から排尿・排便がスムーズに行えなくなるため、排泄の観察も重要となります。状態によっては尿道カテーテルの使用や、排便コントロールのために便秘時の処置も必要になります。
移動
ガワーズ徴候(登攀性起立)や動揺性歩行が出現するため転倒予防が重要です。状態に応じて車椅子の使用も必要となります。
更衣
筋力が低下すると自身でボタンをかけることが困難になります。そのため、マジックテープ®式の衣服を選択するなどの調整が必要です。
リハビリテーション
運動訓練を行う際は注意が必要です。運動負荷での疲労が通常よりも早く起き、なかなか回復しないため、状態の悪化をまねく恐れがあります。日常生活の維持という視点で、軽い運動程度がよいとされます。
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経』 編集/東海大学医学部付属八王子病院看護部/2020年4月刊行/ 照林社