筋・神経筋接合部疾患

『本当に大切なことが1冊でわかる脳神経』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は筋・神経筋接合部疾患の特徴や看護のポイントについて解説します。

 

小川和之
東海大学医学部付属八王子病院看護部主任 認知症看護認定看護師

 

 

筋・神経筋接合部疾患とは?

ここでは、筋が萎縮し、全身の筋力が低下する疾患についてとりあげます。筋自体の変性によるもの(筋疾患)と、神経と筋の接合部が障害される疾患(神経筋接合部疾患)があります。

 

筋ジストロフィー

骨格筋の変性・壊死により筋力が低下します。デュシェンヌ(Duchenne)型、ベッカー(Becker)型など、さまざまな種類があり、好発年齢や症状が異なります。

 

多発性筋炎(PM)、皮膚筋炎(DM)

骨格筋の異常と全身の病変を合併する疾患です。皮膚症状を伴うものを皮膚筋炎と呼びます。

 

重症筋無力症(MG)

神経筋接合部が自己抗体により破壊され、神経から筋への神経伝達が障害されます。

 

 

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看護のポイント

筋力の低下により全身に現れる症状を観察し、進行状況を考慮しながら、身体機能に応じた日常生活動作への援助を行います。

 

疾患が長期にわたることが多いため、家族のケアも重要です。経済状況や介護力などを確認し、社会資源につなげることも考慮します。

 

 

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筋・神経筋接合部疾患の看護の経過

筋・神経筋接合部疾患の看護を経過ごとにみていきましょう(表1-1表1-2)。

 

看護の経過の一覧表はこちら。

 

表1-1筋・神経筋接合部疾患の看護の経過 入院~急性期

表1-1筋・神経筋接合部疾患の看護の経過 入院~急性期

 

表1-2筋・神経筋接合部疾患の看護の経過 退院に向けて、自宅療養(外来)

表1-2筋・神経筋接合部疾患の看護の経過 退院に向けて、自宅療養(外来)

 

表1筋・神経筋接合部疾患の看護の経過 一覧

横にスクロールしてご覧ください。

 

表1脊髄疾患の看護の経過 一覧

 

 

フキダシ:筋・神経筋接合部疾患の患者さんを看護するときには、筋力の低下により、患者さんがどのような状況にあるのかを考えることが大切です。以下のようなポイントに注意しましょう

 

自ら動くことが困難な患者さんの状況を理解する

患者さんは、私たちが普段何気なく行っている動作、例えば頭がかゆいときに掻く、鼻をかむ、のどが渇いたから飲み物を飲む、寝返りをうつ、といったことが困難となります。障害の重症度により違いはありますが、こうした動作ができないことや時間がかかってしまうことは、大きなストレスとなります。看護師は、そうした患者さんの思いをいかにくみ取り、援助を行えるかが重要となります。

 

ナースコールに真摯に対応する

上述のような状況のため、患者さんはナースコールを何度も押すこととなります。あるいは、ナースコールを押すことさえ困難な場合もあります。健常者では些細なことであっても、障害をもつ患者さんにとっては大変だということを理解して対応しましょう。

 

たとえ業務が忙しかったとしても、「またか」などと思ったり、そう思っていると患者さんに感じさせてしまうことがないよう、態度と声かけには注意しましょう。

 

患者さんの気持ちをわかろうと努力する

患者さんから、「私の気持ちはわからない」と言われることがあります。障害を抱えた本人にしかわからない現実があり、同じ疾患であっても、個々で思いや考えは異なります。看護師は、「気持ちをわかろうとする努力」「寄り添う努力」を怠ってはいけません。そうした姿勢が、患者さんに「理解しようとしてくれている」と感じてもらうことにつながります。

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経』 編集/東海大学医学部付属八王子病院看護部/2020年4月刊行/ 照林社

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