顔面神経麻痺
『本当に大切なことが1冊でわかる脳神経』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は顔面神経麻痺の検査・治療・看護について解説します。
石田敦子
東海大学医学部付属八王子病院看護部副主任
顔面神経麻痺とは?
顔面神経麻痺は、何らかの原因で顔面神経(Ⅶ)が障害された病態の総称です(図1)。
中枢性か末梢性かの鑑別が重要となります。前額筋の随意運動(額のしわ寄せ運動)を見て、中枢性か末梢性かの鑑別を行うことができます(図2)。
★1 ギラン・バレー症候群
★2 サルコイドーシス
★3 多発性硬化症(MS)
memo:ライム病
マダニを介してボレリアという細菌に感染することで発症する。皮膚症状をはじめ、頭痛、関節痛などの全身症状に加え神経症状が発症する。
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患者さんはどんな状態?
ここでは、末梢性顔面神経麻痺の症状について解説します。
ベル麻痺
主に、1型単純ヘルペスウイルスの再活性化により発症する、片側性の顔面神経麻痺です。
突然、片側顔面の閉眼ができなくなります(兎眼〈とがん〉)。
額のしわ寄せができなくなり、鼻唇溝が消失し、口角が下がって食べ物がこぼれます。
耳介、顔面の疼痛やしびれが生じ、舌前2/3の味覚が低下します。
聴覚の過敏、涙腺・唾液腺の分泌低下などがみられます。
ラムゼイ・ハント症候群
顔面神経に潜伏していた帯状疱疹ウイルスの活性化によって発症する、片側性の顔面神経麻痺です。
ベル麻痺と同様の症状が、同側にみられます。
難聴、めまい、眼振を伴います。
患側耳孔内に帯状疱疹が生じます。
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どんな検査をして診断する?
中耳炎や帯状疱疹、腫瘍の有無を調べるため、各種検査を行います(表1)。
顔面表情運動の評価については、下記10項目について点数をつけ、評価を行います(表2)。また、顔面神経の検査を行います(表3)。
★1 NET(nerve excitability test)
★2 ENoG(electroneurography)
★3 CMAP(compound muscle action potential)
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どんな治療を行う?
副腎皮質ステロイドの投与:神経炎症・浮腫を改善します。
抗ヘルペスウイルス薬の投与:ウイルスの増殖を抑制します。
ビタミンB製剤の投与:神経の再生を促進します。
麻痺が重症化した場合はジャネッタ手術(微小血管減圧術)を検討します。
memo:ラムゼイ・ハント症候群の治療
帯状疱疹に伴う皮疹、搔痒感、疼痛に対して、薬剤の使用やクーリング・温罨法で症状緩和を図る。
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看護師は何に注意する?
難聴がある場合は、説明を聞き取れているか確認し、必要時は筆談も交えます。
めまいがある場合は、歩行時のふらつきに注意が必要です。
閉眼障害に対して、点眼薬の使用や眼帯の説明をします。
顔貌の変化に対するストレスが生じるため、患者さんが気持ちを表出できるようかかわります。
開口障害が生じている場合は、食事形態の調整を行います。
味覚障害による食欲低下も生じるため、バランスのよい食事を心がけるよう説明します。
後遺症の予防、表情筋の改善のためリハビリテーションの必要性を説明します。
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経』 編集/東海大学医学部付属八王子病院看護部/2020年4月刊行/ 照林社