人工血管置換術の看護
『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は人工血管置換術の看護について解説します。
長谷川久美子
新東京病院看護部
人工血管置換術では看護師は何に注意する?
上行大動脈置換術、弓部大動脈置換術
上行・弓部大動脈置換術は、その他の心臓手術に比べて合併症発生率や死亡率が高いです。また、主要臓器への栄養血管でもある大動脈の手術となり、影響は多岐にわたります。
術後は、特に出血や脳梗塞などの合併症に注意が必要です(表1、表2)。
★1 低心拍出量症候群
下行大動脈置換術、胸腹部大動脈置換術
術後は特に、脊髄梗塞による対麻痺に注意が必要です(表3)。
表3下行大動脈・胸腹部大動脈置換術後に特に気をつけたい合併症と看護
腹部大動脈置換術
腹部大動脈置換術は、ほかの手術と違い、術後出血の指標となるドレーンが挿入されないため、術後出血の評価が容易ではありません。血圧、検査データ、腹囲に注意し、術後出血を見逃さないことがポイントです(表4)。
腹部大動脈置換では、合併症がないと判断された後、めやすとして排ガスが確認されたら飲水開始、排便が確認されたら食事開始となります。
初回は主治医と相談し、消化のよい3分粥や5分粥から開始します。
文献
- 1)日本循環器学会:大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン(2011年改訂版).(2019.09.01アクセス)
- 2)田端実,讃井將満責任編集:特集 心臓血管外科 編.INTENSIVIST 2015;7(4).
- 3)道又元裕総監修,露木菜緒監修・解説:ICU3年目ナースのノート.日総研出版,愛知,2013.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社