《循環器の理解に役立つ生理学》心筋の興奮と収縮のしくみ
『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は心筋の興奮と収縮のしくみについて解説します。
中嶋ひとみ
新東京病院看護部
〈目次〉
心臓の生理学で大切なのは、心臓の筋肉が細胞レベルでどのように動いているのかを理解しておくことです。これらの知識は、循環変動のしくみ、不整脈、薬理作用の理解につながります。
心筋は固有心筋と特殊心筋に分けられ、固有心筋が心臓ポンプ、特殊心筋がペースメーカの役割を果たします。
心筋の組織構造
心筋は骨格筋と同様の横紋を有する横紋筋(おうもんきん)ですが、不随意筋です。骨格筋と異なり、筋線維どうしが枝分かれ・融合しています(図1)。
心筋細胞からみる興奮のしくみ
正常の心筋では、洞結節からの興奮(自動能:自発的な活動電位)発生⇒刺激伝導系⇒興奮⇒収縮が生じます。これらを興奮収縮関連といいます(図2)。
生体の細胞外にはナトリウムイオン(Na+)が多く、細胞内にはカリウムイオン(K+)が多くなっています。細胞内にあるK+の一部は、カリウムチャネルを通って細胞外に出ていきます。プラスに帯電したK+が細胞外に出ることにより、細胞膜の外側がプラス(+)になり、細胞膜の内側がマイナス(-)となります。
細胞内と細胞外の電位差を膜電位といい、静止時の細胞膜内外の電位差を静止電位といいます。
固有心筋細胞の活動電位
固有心筋細胞では、隣接する細胞からのNa+の流入によって膜電位が脱分極し、活動電位が発生します。その後、再分極し、静止状態に戻ります。
これらは0相から4相に分けられます(図3)。
心筋細胞内の組織でみる興奮と収縮
心筋細胞ではアクチンフィラメントにCa2+がくっつくと、アクチンフィラメントがミオシンフィラメントに重なるようにスライドして細胞の長さを縮めます。これが(筋)収縮です(図4)。
たくさんの筋細胞の収縮にはたくさんのCa2+が必要です。そのため細胞外からの流入に加え、筋原線維の筋小胞体で貯蔵されているCa2+を使用します。
細胞内のCa2+濃度の上昇を合図に、筋小胞体からCa2+が放出されます。
文献
- 1)医療情報科学研究所編:病気がみえる vol.2 循環器 第4版.メディックメディア,東京,2017:2-29.
- 2)稲田英一,医療情報科学研究所:イメカラ 循環器 ̶イメージするカラダのしくみ.メディックメディア,東京,2010:2-19.
- 3)堀正二監修,坂田泰史編:図解 循環器用語ハンドブック 第3版.メディカルレビュー社,東京,2015.
- 4)小澤瀞司,福田康一郎監修,本間研一,大森治紀,大橋俊夫 他 編:標準生理学 第8版.医学書院,東京,2014:632-654.
- 5)坂井建雄,河原克雅編:カラー図解 人体の正常構造と機能 【全10巻縮刷版】 第3版.日本医事新報社,東京,2017:82-107.
- 6)増田敦子編著:身体のしくみとはたらき̶楽しく学ぶ解剖生理.サイオ出版,東京,2015.
- 7)大谷修,堀尾嘉幸:カラー図解 人体の正常構造と機能 第2巻 循環器 第3版.日本医事新報社,東京,2017:82-107.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社