なぜ体をまっすぐに保てるの?
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は平衡感覚について解説します。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
なぜ体をまっすぐに保てるの?
平衡感覚をつかさどるのは、内耳にある三半規管と平衡斑(へいこうはん)です(図1)。
このうち、体をまっすぐに保つ静的平衡覚に関係しているのが平衡斑です。
平衡斑は平衡感覚の受容器で、三半規管の根元にあります。ここには、卵形嚢(らんけいのう)と球形嚢(きゅうけいのう)という2つの袋があり、水平方向の動きを感知する平衡斑と、垂直方向の動きを感知する平衡斑が納められています。平衡斑にはゼラチンに似た基質があり、その下には有毛細胞という感覚細胞が分布しており、上にはカルシウム塩でできた小さな石(耳石あるいは平衡石)がたくさん乗っています。そのため、平衡斑は耳石器とも呼ばれます。
頭の位置が変化すると耳石が動き、それにつられてゼラチン様の基質も動き、下にある有毛細胞の毛が動いて興奮が生じます。その興奮が電気信号に変換され、前庭神経を通じて大脳皮質の体性感覚野に送られます。体性感覚野では、2つの平衡斑からの信号を組み合わせて体の傾き具合を判断し、バランスをとるように目や手足に情報を伝えます。
私達は、同じ姿勢でじっとしていることは不可能です。平衡斑は、体の動きに合わせて絶えずバランスを保ち、まっすぐに体を保てるように働き続けているのです。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版