旅行の際の注意点はなに?|ストーマ術後ケア
『ストーマ術後ケア まるっとわかるQ&A95』より転載。
今回は、ストーマ保有者の旅行の先の注意について解説します。
旅行の際の注意点はなに?
旅行の際は,食事や環境の変化により排便状態が変わることがあります.
万が一のためにいつもより多めに装具を準備しておきます.宿泊先の設備を事前に確認し,装具交換場所や排泄処理方法をあらかじめ把握しておくと安心して旅行に臨めます.乗り物での移動の際にも,気をつけたほうが良い点がいくつかあります.安心して旅行が楽しめるように,事前に注意点を説明しておきましょう.
〈目次〉
解説
旅行の際は,排便状態の変化やトラブル時の対応として,宿泊予定より多めの交換用の装具セット,ゴミ袋,ティッシュペーパーなど簡単に交換できるセットを準備しておきます.
1準備の注意点
準備の際,面板の穴あけが必要な場合は,すぐに交換できるように旅行前にカットしておいたり,既成孔のものを準備しておきます.水が不要な洗浄剤も販売されています.旅行先で簡便に装具交換ができる方法をあらかじめ伝えます.また,海外旅行では荷物の紛失の危険性も考慮して,複数のバッグに装具を分散して準備しておくと安心です.万が一,装具が足りなくなった場合に備えて,現地での装具の入手方法を確認しておくよう伝えます.
2飛行機での移動の注意点
飛行機では,気圧の変化で採便(尿)袋が膨張することがあります.離陸前に必ず採便(尿)袋の中身を廃棄しておきます.
採便袋の場合は,ガス抜きフィルターつきの製品やあとづけのガス抜きフィルターを一時的にストーマ袋につけておくことを勧めます.また,機内持ち込み荷物にも必ず装具を準備し,いつでも交換できるようにします.また,国際線では機内にハサミを持ち込むことができませんので,必ず旅行前に面板の穴あけをしておくか,既成孔のものを準備します.
3車での移動の注意点
車の場合は,密閉されたところでは温度が上昇し,熱で皮膚保護剤の材質が低下するため,車のトランクの中に放置せず直射日光が当たらないところで保管しましょう.暑い夏の時期では,クーラーボックスに保冷剤を入れ,装具が水滴などで濡れないようにビニール袋を使用し保管するなどの工夫が必要です.
知っておこう!ストーマ用品の管理方法について
ストーマ用品は,直射日光の当たらない比較的気温変動の少ない場所に保管します.製品には,製造年月日や使用期限などが表示されています.購入時はそれらを確認し,先に購入したものから使用します.購入時に箱に日時を記入すると使用の目安になります.
ストーマ用品は,購入してから2~3年は保存可能ですが,基本的には半年から1年以内に使用することが望ましいといわれています.とくに夏季などは大量の購入を避け,厚みのあるダンボール箱などに収納すると外気温の影響を受けにくいです.
[Profile]
松田 貴子 まつだ・たかこ
星ヶ丘厚生年金病院看護局看護係長/皮膚・排泄ケア認定看護師
*所属は掲載時のものです。
本記事は株式会社メディカ出版の提供により掲載しています。
[出典]『ストーマ術後ケア まるっとわかるQ&A95 病棟での困りごとがこれで解決!』(編著)菅井亜由美/2013年4月刊行