ベンゾジアゼピン系薬剤はせん妄を起こすことがあるため使わない方がよいですか?

『せん妄のスタンダードケア Q&A100』より転載。
今回は、ベンゾジアゼピン系薬剤の薬効について解説します。

 

ベンゾジアゼピン系薬剤はせん妄を起こすことがあるため使わない方がよいですか?

 

ベンゾジアゼピン系薬剤をせん妄の原因・誘因となるような疾患や病態の患者さんに使うのは避けましょう.
また,高齢者は生理機能の低下によりくすりの作用が強く出てしまうことがありますので,使用する際には少量から始めるとよいでしょう.

 

〈目次〉

そもそもベンゾジアゼピン系薬剤とは

ベンゾジアゼピン系薬剤の主な薬効は,抗不安・鎮静・催眠作用,筋弛緩・抗痙攣作用です.

 

現在,抗不安薬や睡眠薬として用いられているほとんどのくすりは,化学構造上の特徴からベンゾジアゼピン系とよばれています.

 

抗不安効果のより強いものを抗不安薬,催眠効果の強いものを睡眠薬とよび,作用時間の違いにより分類します(表1).

 

表1代表的なベンゾジアゼピン系薬剤

代表的なベンゾジアゼピン系薬剤

 

なぜベンゾジアゼピン系薬剤はせん妄を起こしやすいのか

ベンゾジアゼピン系薬剤は精神的・身体的に緊張を解くことで,リラックスさせる効果があります.しかし,精神的な緊張の低下は意識レベルの低下につながり,せん妄を誘発します.

 

また,身体的な緊張の低下は,ふらつきや転倒の原因となります.「薬剤性せん妄を起こしやすいのはどんな患者さんですか?」で述べているような薬剤性せん妄を起こしやすい患者さんには,ベンゾジアゼピン系薬剤を使うのはなるべく避けましょう.

 

ただし,アルコール離脱せん妄の治療にはベンゾジアゼピン系薬剤を使用します.

 

高齢者ではとくに注意が必要

高齢者では生理機能の低下でくすりが蓄積しやすいだけでなく,睡眠薬に対する感受性自体が亢進しているといわれています.

 

同じ量を投与しても若年者に比べて作用時間が長くなりやすく,日中の眠気,ふらつき,脱力などの症状が出やすくなります.日中の覚醒度が低下し,昼夜のリズムが崩れることで夜間せん妄の原因となる可能性もあります.

 

高齢者にベンゾジアゼピン系薬剤を使用する際には,少量から始めるとよいでしょう.

 

ベンゾジアゼピン系薬剤の持ち越し効果

作用時間の短いタイプの睡眠薬は体の中から排出されるのが早いので,翌朝の眠気やふらつきといった,いわゆる持ち越し効果(作用時間が,睡眠を中断期間として,覚醒後に継続すること)が少ない傾向があります.作用時間の長いタイプのくすりは効果が持続しますので,持ち越し効果が出現しやすくなります.

 

非ベンゾジアゼピン系薬剤は何が違うのか

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬とよばれるゾルピデム(マイスリー)は,筋弛緩作用が弱いという点で,筋力の低下によりふらつきや転倒に注意が必要な高齢者に使用しやすいとされています.

 

しかし,催眠作用による意識レベルの低下はせん妄の誘因となりえますので注意が必要です.

 


[文献]

  • 1)日本総合病院精神医学会 薬物療法検討小委員会編:せん妄の治療指針,p.12-15,星和書店,2005

 


[Profile]
須藤 知子 (すどう ともこ)
千葉大学医学部附属病院薬剤部

 

石井伊都子 (いしい いつこ)
千葉大学医学部附属病院薬剤部

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

[出典]『“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100』(編集)酒井郁子、渡邉博幸/2014年3月刊行

 

“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100

 

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