ストーマ手術の前に確認しておく情報はなに?
『ストーマ術後ケア まるっとわかるQ&A95』より転載。
今回は、ストーマ手術前の確認事項について解説します。
ストーマ手術の前に確認しておく情報はなに?
まず,手術予定日,予定術式,ストーマの種類,病状,手術前後の治療予定,既往歴,患者や家族への説明内容をカルテなどから確認します.一時的に造設する場合など,ストーマ造設後の治療全体について,今後の見通しを把握しておきます.
解説
上記を確認したうえで,手術やストーマ造設について,患者がどのように受け止めているのか,よく聴きます.患者の不安のレベルをアセスメントし,ストーマに関するオリエンテーション内容の量やスピードの調節につなげていきます.
手術前には,必ずインフォームド・コンセントの場が設けられますが,在院日数の短縮により,ストーマ造設についてのインフォームド・コンセントは,外来で行われている状況が見受けられます.
患者は「生活」の場に帰るため,病状だけではなく,入院前の生活に関する情報収集やセルフケア能力のアセスメントが重要です.入院前はどのような生活を送ってきたか,何を大事にしているのかを知ることで,患者の持っている力を引き出し,ストーマケアに活かすことができます.
とくに,ストーマ装具の取り扱いやスキンケアの指導を行ううえでは,視力や聴力,手先の巧こう緻ち性せいについて,アセスメントしておきましょう.たとえば視力の低下があっても,どのくらいの大きさや色なら識別できるか,はさみを使うことは可能かなどの視点で確認することにより,ストーマ装具やアクセサリーの選択に役立てることができます.
また,がん終末期の緩和を目的に手術を受けるケースでは,精神的にも体力的にもつらく,患者自身でストーマケアができない場合もあります.家族や協力者からどの程度支援が受けられるかなども,十分確認しておく必要があります.
知っておこう!患者の心理的衝撃や身体的苦痛が大きいとき
がん告知や緊急手術など,心理的な衝撃や身体的苦痛が大きい場合,説明内容を受け止められない患者もいます.
表情や情動的な反応に目を向け,不安や緊張を和らげ,現実が認知できるようなかかわりをもつことが大切です.
[引用・参考文献]
- 1)診療点数早見表2012年4 月版.医学通信社,2012,597─8.
- 2)小島操子.看護における危機理論・危機介入.金芳堂,2004,26─33.
- 3)大井綱朗.皮膚科疾患.中川秀己編.中山書店,2001,42─7,(看護のための最新医学講座,19).
- 4)西出薫ほか.“ストーマケア技術の文献的考察とエキスパートオピニオン”.ストーマケア エキスパートの実践と技術.日本ET/WOC協会編.照林社,2007,44─6.
[Profile]
大溝 茂実 おおみぞ・しげみ
川崎市立井田病院看護部教育研修担当師長/皮膚・排泄ケア認定看護師
*所属は掲載時のものです。
本記事は株式会社メディカ出版の提供により掲載しています。
[出典]『ストーマ術後ケア まるっとわかるQ&A95 病棟での困りごとがこれで解決!』(編著)菅井亜由美/2013年4月刊行