患者にあったストーマ装具はどのように選ぶの?
『ストーマ術後ケア まるっとわかるQ&A95』より転載。
今回は、患者にあったストーマ装具の選び方について解説します。
患者にあったストーマ装具はどのように選ぶの?
ストーマ装具の選択は,管理時期によって異なります.術直後は,ストーマが観察・管理しやすく短期交換が可能なものを選択します(詳細は手術直後に使用するストーマ装具参照).社会復帰時の装具選択は,ストーマのタイプやサイズ・形状,腹壁の硬さや形状,皮膚のコンディション,オストメイトの好みや生活スタイル,手先の器用さ,希望する装具交換間隔やコストなどの情報をもとに選択します.
〈目次〉
社会復帰用ストーマ装具の選択基準
社会復帰用ストーマ装具の選択基準としては,
①排泄物が漏れない
②皮膚障害を起こさない
③日常生活が制限されない
④オストメイトが取り扱いやすい
⑤外観上目立たない
⑥ どんな動きにも安定した装着感が得られる
⑦経済性(ランニングコスト)
があげられます.
装具選択は,前述した情報を基に,構成や面板の分類から考えることが大切です.
第1段階:面板とストーマ袋のタイプを選択
1、どこの部位で造設されたストーマか,排泄物の量や性状は?
・ ストーマ装具は大腸ストーマ用,または小腸ストーマ用,または尿路ストーマ用を選択します.
・ 排泄物の量や性状から耐久性のある皮膚保護剤が必要か否かを考えます.
2、ストーマサイズと形状は?
ストーマに高さがあれば平面型,高さがなければ凸面型を選択します.ただし,凸面型を選択する場合は必要な凸面の深さと形状を考えます.また,ストーマの形状がおおよそ円形に近ければ,ストーマサイズが安定した時期には既成孔の選択が可能になります.
3、腹壁の硬さや形状は?(腹壁が硬いか柔らかいか)
基本的には,硬い腹壁には柔らかい面板,柔らかい腹壁には硬い面板を選択すると腹部に沿いやすくなります.
4、ストーマ周囲皮膚の状況は?(周囲皮膚は平坦か,しわやくぼみがあるか,しわの深さや部位はどうか)
ストーマ周囲に補正が必要な部位があるか,近接部にくぼみがある場合,装具で補正できる程度か否か.補正する材料が必要な場合,練状・用手形成・板状皮膚保護剤のどれを使うかなどを考えます.
第2段階:本人の好みや生活スタイル,希望する交換間隔やコスト面などを考慮
1、希望する交換間隔は?
短期交換( 1 ~ 3 日)か,中期交換( 3 ~5 日)か,長期交換( 5 ~ 7 日)か,掲載されている耐久性を確認します.また,実際に使用した面板の溶解・膨潤の程度を確認して決定します.
2、希望する構成タイプ(単品系か二品系)は?
ストーマ袋だけを取り替える希望があるか,好みはどうか.二品系装具を選択する場合はフランジのタイプはどうするか(固定型・浮動型か粘着式カップリングタイプか)を考えます.
3、コスト面の希望はどうか?
二品系より単品系のほうが安価で,凸面型より平面型のほうが安価になります. 1 枚の値段より,ひと月単位にかかるコストで考えます.
知っておこう!入院中と退院後の装具選択の視点は違う!
最近は在院日数が短いため,入院中の装具選択では,
①排泄物が漏れない
②皮膚障害を起こさない
ことが優先されます.
退院後のストーマ外来では,
① 実際に使用している装具で日常生活が制限されていないか
②オストメイトが取り扱いやすいか
③外観上目立たないか
④安定した装着感が得られるか
⑤経済性に無理がないか
という視点で確認します.
つまり,入院中に決めた装具が一生ものの装具ではなく,便利なものや新しいものが発売されれば変更できることを伝えておくことも大切です.
[引用・参考文献]
- 1)日本ストーマリハビリテーション学会編.ストーマリハビリテーション学用語集.第2 版.金原出版,2003,154─5.
- 2)前掲書 1),90.
- 3)日本ET/WOC協会編.ストーマケア エキスパートの実践と技術.照林社,2007,23.
- 4)関西ストーマ講習会実行委員会・関西STOMA研究会主催.関西ストーマ講習会テキスト.平成17年8 月制作・平成24年改訂.
- 5)ストーマリハビリテーション講習会実行委員会編.ストーマリハビリテーション 実践と理論.金原出版,2006.
- 6)穴澤貞夫編.実践ストーマ・ケア.へるす出版,2003,(臨牀看護セレクション,10).
- 7)溝上祐子監.入門 尿路ストーマケア.ウロ・ナーシング冬季増刊.メディカ出版,2004.
[Profile]
小林 直美 こばやし・なおみ
パナソニック健康保険組合松下記念病院看護部主任/皮膚・排泄ケア認定看護師
*所属は掲載時のものです。
本記事は株式会社メディカ出版の提供により掲載しています。
[出典]『ストーマ術後ケア まるっとわかるQ&A95 病棟での困りごとがこれで解決!』(編著)菅井亜由美/2013年4月刊行