静脈内注射の各種ライン(CV、末梢静脈)の ポイント|輸液ラインの「こんなときどうする?」

 

『エキスパートナース』2016年6月号<輸液ラインの「こんなときどうする?」>より抜粋。
静脈内注射の各種ライン(CV、末梢静脈)の ポイントについて解説します。

 

杉江英理子
神戸市立医療センター中央市民病院看護部主査

 

Point

  • 配合変化や循環動態の変化を避けるためにラインを使い分ける
  • 感染予防のために、観察やカテーテルの交換を行う

 

〈目次〉

 

そもそも、なぜラインを使い分ける必要があるの?

体液管理や栄養補給、薬剤の静脈内への投与のため、臨床の場面で日常的に静脈内注射(drip in vein、DIV)が行われます。

 

投与方法としては、主に以下があります。

 

これらは目的や場面に応じて使い分ける必要があります(図1)。

 

図1静脈内注射を行う際に使用されるラインと特徴

静脈内注射を行う際に使用されるラインと特徴

 

その理由は、薬剤にはさまざまな種類があるため、1本のラインから複数の薬剤を同時投与することで薬剤どうしが反応し、配合変化を起こしてしまうことがあるためです。

 

配合変化が起きると、薬剤の一部が結晶化してラインを閉塞させてしまい、再度、ラインをとりなおすことになったり、必要な薬剤が投与できなくなったりします。

 

また、降圧薬や昇圧薬、鎮静剤を投与しているラインから、別の薬剤を急速投与してしまうと、循環動態に変動をきたし、病状の回復の遅れにつながる可能性もあります。

 

これらの不具合は患者の身体に大きく影響するため、看護師は十分に注意して薬剤投与をする必要があります。

 

1中心静脈カテーテル

中心静脈カテーテルとは

【特徴】高カロリー輸液や抗がん剤の投与が可能

中心静脈カテーテル

 

  • 中心静脈に留置するカテーテル
  • 挿入部位は、鎖骨下静脈、内頸静脈、大腿静脈表1
  • シングルルーメンカテーテル(内腔が1つ)と、マルチルーメンカテーテル(内腔が複数)(図2)がある

表1CVカテーテルの挿入部位

CVカテーテルの挿入部位

 

カテーテル関連血流感染(CRBSI)の点から、成人では鎖骨下静脈が推奨されている2

 

図2マルチルーメンカテーテルの構造

 

  • 基本的な構造はPICCも同じ
  • ルーメンごとに内腔の太さや開口位置(ポート)などが異なる

マルチルーメンカテーテルの構造

 

※このほかに、内腔が4つの「クワッドルーメンカテーテル」もある
※※ハブの色は製品によって異なる
※※※ルートにポート位置や内腔が記載されている
(解説は文献1より引用、一部改変)

 

中心静脈カテーテルのメリット

  • 血管外への逸脱が起きにくいため、確実性の高い投与が可能
  • 高カロリー輸液抗がん剤など血管炎を起こしやすい薬剤の投与が可能
  • 体液量や心機能(前負荷)のモニタリングに用いることができる1
  • 複数の内腔があることで、「カテコラミン」「鎮静剤」「抗生剤や緊急時のショット・急速輸液」ごとや、配合変化・同時投与で不具合がある薬剤でも同時投与が可能

 

中心静脈カテーテルのデメリット

  • 長期留置・ルーメン数の増加によって、カテーテル関連血流感染(catheter related blood stream infection、CRBSI)の発生率も増加する(ルーメン数の選択は必要最低限が推奨されている2
  • 挿入時に血胸や気胸動脈穿刺といった重大な合併症が起こる可能性がある
  • 体動が制限されるため、患者の負担となる 

 

2末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)

末梢挿入型中心静脈カテーテルとは

【特徴】長期留置可能な中心静脈(CV)カテーテル

末梢挿入型中心静脈カテーテル

 

  • 上腕または肘の末梢静脈から挿入する中心静脈カテーテル(先端は中心静脈に位置)
  • CVカテーテル同様ルーメンの数が異なるものがあるが、ダブルを用いることが多い

 

末梢挿入型中心静脈カテーテルのメリット

  • 他のCVカテーテルと比べ比較的容易に挿入でき、注・挿入後の感染などのリスクも少ない
  • 高カロリー輸液抗がん剤など血管炎を起こしやすい薬剤の投与が可能
  • 管理方法しだいで、長期留置が可能
  • 挿入時に気胸や血胸といった、重大な合併症を起こすリスクが低い

 

末梢挿入型中心静脈カテーテルのデメリット

  • 静脈炎を起こすことがある
  • 肘の場合、肘を曲げると落下速度が不良になる
  • 内腔が狭いため、閉塞のリスクが高い
  • 比較的コストがかかる 

 

3末梢静脈カテーテル

末梢静脈カテーテルとは

【特徴】臨床場面で最も多く使用される

末梢静脈カテーテル

 

  • いわゆる「末梢静脈ライン」と呼ばれるもの
  • 挿入部位は上肢・下肢の静脈が選択される
    上腕の静脈のほうが、患者の体動も制限せず、また、感染防止の面からも推奨される3

 

末梢静脈カテーテルのメリット

  • 看護師が血管確保を行うことができる
  • 患者の負担が少ない

 

末梢静脈のデメリット

  • 薬剤が血管外へ漏出すると、壊死や硬結などの皮膚障害を起こしやすい

 

感染対策のポイント

続いて、輸液ラインの感染対策のポイントについて解説します。

 

図3感染対策のポイント

感染対策のポイント

 

1挿入部観察のポイント

  • カテーテル挿入部の被覆には、滅菌の透明フィルムドレッシング材(表2-①)か滅菌ガーゼ(表2-②)を使用4
  • それぞれのドレッシング材によるカテーテル関連血流感染発生に差はない5,6
  • ドレッシング材の上からの触診や、透明ドレッシング材であれば視診を毎日行う
  • 静脈炎の徴候(熱感、圧痛、発赤、触知可能な静脈索〈静脈の走行に沿って存在する触知可能な硬結〉)や、感染症、カテーテル機能不全などが見られる場合はすぐにカテーテルを抜去する3

表2滅菌透明フィルムドレッシング材と滅菌ガーゼの特徴

滅菌透明フィルムドレッシング材と滅菌ガーゼの特徴

 

文献4より引用、一部改変)

 

2カテーテルの交換のタイミング

  • 成人の場合、末梢静脈カテーテルは72~96時間より頻繁に交換する必要はない
  • 小児では、臨床的に必要となった場合のみ入れ替える
  • CVカテーテル・PICCに関しては、定期的な交換はしない

 

3輸液ラインの交換のタイミング

  • 血液製剤・脂肪乳剤を使用するラインは、注入開始から24時間以内に交換
  • プロポフォールに使用するラインは6~12時間ごとに交換
  • それ以外の輸液セットは、最低96時間以上の間隔をあけて交換

 

製品写真提供:日本コヴィディエン株式会社

 


[文献]

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2016照林社

 

P.39~42「各種ライン(CV、末梢静脈)の ポイント」

 

[出典] 『エキスパートナース』 2016年6月号/ 照林社

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