がん化学療法の基礎のキソ |いまさら聞けない!ナースの常識【24】

毎日の業務の中で触れているけど、『いまさら聞けない』ことってありませんか?

知っているつもりで実は説明できない基礎知識や、ちょっと気になるけど調べるほどでもないな、なんてこと。

そんな看護師の素朴な疑問を、元看護師ライターがこっそり教えます。

 

Vol.24 がん化学療法の基礎のキソ

 

がんの治療は大きく3つある。

 

●手術でがんとその周囲の組織を切除する方法

放射線を使ってがん細胞をたたく方法

●抗がん剤を使う化学療法

 

ほかにも温熱療法や免疫療法などもあるが、特に進歩がめざましい化学療法についておさらいしてみる。

 

そもそも化学療法って何?

化学療法とは一般に、抗がん剤を使ってがんを死滅させる、あるいは小さくする方法。抗がん剤治療だけの場合もあるが、手術療法や放射線療法と組み合わせて行われる場合も多い。

 

抗がん剤の種類には、抗がん剤・ホルモン療法・分子標的薬などがあるが、どれも日々研究が進んでおり、新薬がどんどん開発されている。たとえば比較的新しい分子標的薬は、がん細胞の分裂・増殖・転移を分子レベルで抑える比較的新しい薬で、従来の抗がん剤よりも副作用が少ないといわれている。

 

抗がん剤や分子標的薬での治療を行う場合、どんな薬を1日あたりどれ位、何日間使用するかだけではなく、薬の組み合わせや、投与の順番も決まっている。副作用を予防するための薬剤を前投与するとか、補液をどれだけ使うのか、なども決まっている。こういった決まりのことをレジメンと呼ぶ。

 

レジメンによっては化学療法だけの場合もあるが、手術前なのか手術後なのか、放射線療法と組み合わせて行うのかなど、がんの部位や状態、患者の状態などによって大きな違いがある。

 

看護師の役割

化学療法を担当する看護師に求められることは実に多様だ。まず、レジメンを覚え、正確に実施すること

 

例えば、レジメンの種類によって使用する薬剤、薬剤の保存方法、使用する薬剤の順番、抗がん剤以外の薬剤の容量や順番、補液の量や順番が決まっており、これも病院によっても様々である。もちろんマニュアルもあるだろうが、決められたことを決められた順番や時間に実施する、という正確さが求められる。

 

次に、化学療法ではほぼ100%みられる副作用への対応

 

抗がん剤の副作用は実に様々ではあるが、メジャーなものとしては、骨髄抑制、悪心・嘔吐下痢などの胃腸障害、皮疹などの皮膚障害、脱毛、神経障害などがある。薬剤の種類によってある程度予測されるが、症状の現れ方も急性・遅延性など多岐に渡る。

 

看護師には、これらの副作用を常に予測して行動することが求められる。症状が出てから対応を検討して準備して・・・では遅いのだ。

 

図1 抗がん剤の副作用の発現時期と主な症状

 

また患者への精神的なサポートも必要。がんであること、多くの治療を受けること、副作用に悩まされること、これを全て当たり前のことだからで片付けるのではなく、なぜそうなるのかを把握し、どうすれば患者が楽になるか・前向きに治療を受けることが出来るのかを考え、サポートしていく必要がある。

 

もちろん看護師が全て行うわけではなく、医師、薬剤師、心理カウンセラーなどと協力するのだが、患者の一番近くで訴えを聞くのは看護師であることも多く、医師等への情報の橋渡しも看護師の重要な仕事といえよう。

 

日進月歩で変わっていく抗がん剤治療。より安全でより効果的な方法が検討され、新しい薬剤やレジメンもどんどん増えていく。がん治療に関わる看護師はこれらの情報に対するアンテナを常に高くし、患者と関わっていく必要があるだろう。

 

【岡部美由紀】

 

SNSシェア

看護ケアトップへ