殿部や上腕に刺入するのはなぜ?|筋肉内注射
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『看護技術のなぜ?ガイドブック』より転載。
今回は筋肉内注射に適した部位に関するQ&Aです。
大川美千代
群馬県立県民健康科学大学看護学部准教授
殿部や上腕に刺入するのはなぜ?
筋肉内注射に適しているのは、筋層が厚く、大血管や神経が少ない部位です(図1)。
殿部、上腕部、大腿上部などが条件に当てはまりますが、大腿上部への施行は筋拘縮(きんこうしゅく)のおそれがあるため、今日ではほとんど行われていません。
図1筋肉内注射の実施部位
外来などでは、簡便に行えるという利点から上腕三角筋を用いることが多いのですが、骨神経に近くて筋層も浅いので、刺入は慎重に行います。肩関節を外転させたままだと筋肉が緊張して疼痛が強くなるので、手を腰や腹部に置いて三角筋を弛緩させるようにします。
殿部では中殿筋が用いられます。これは、中殿筋が大殿筋より厚く、重要な神経や血管がなく、便や尿などで汚染されにくいためです。プライバシーに配慮し、不必要な露出を避けることが大切です。
なお、小児や高齢者には注射を最小限にします。なぜなら筋肉内注射には、筋拘縮などの局所障害や神経障害などの副作用があるためです。1970年代に小児の大腿四頭筋拘縮症が多発したことで、年齢のいかんを問わず筋肉内注射はなるべく行わない方向になっています。特に、筋肉が発育過程にある小児や、筋肉の萎縮が始まっている高齢者には、筋肉内注射を最小限にする必要があります。
※編集部注※
当記事は、2020年8月29日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護技術のなぜ?ガイドブック』 (監修)大川美千代/2016年3月刊行/ サイオ出版