排泄後、陰部の清潔に努めるのはなぜ?|排泄援助
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『看護技術のなぜ?ガイドブック』より転載。
今回は排泄後の感染予防に関するQ&Aです。
大川美千代
群馬県立県民健康科学大学看護学部准教授
排泄後、陰部の清潔に努めるのはなぜ?
排泄後に陰部を清潔にするのは、感染を防止するためです。
スタンダード・プリコーションの考え方に基づき、手袋を装着して行います。女性の場合は、肛門部に付着している大腸菌などによる逆行性感染、尿路感染を避けるため、排便の有無にかかわらず、尿道口から肛門に向けて拭きます。
排便があった場合は、特に念入りに行う必要があります。便器を当てたまま尿道口から肛門に向かって拭きます。この時、ちり紙で何回かに分けて拭きますが、ちり紙だけで不十分な場合、あるいは下痢をしている場合などは、脱脂綿で清拭を行うか、洗浄します。便の拭き残しがあると、皮膚炎や褥瘡の原因になります。
特に下痢の場合は、大腸液が多く含まれているため、ただれを起こしやすいので注意します。最後に患者の腰を持ち上げ、肛門の後ろを殿部まで拭きます。腰が十分に持ち上がらない場合は、一旦側臥位にして十分清潔になっているか確認します。陰部は不潔になりやすい部分ですので、性別にかかわらず清潔に努めましょう。
memoスタンダード・プリコーション
スタンダード・プリコーションとは、すべての患者の(1)血液、(2)すべての体液、汗を除く分泌物、排泄物、(3)傷のある皮膚、(4)粘膜を、感染性のあるものとして取り扱うことを基本とした感染予防策です。患者から患者へ、患者から医療従事者へ、医療従事者から患者へ—といった感染を防止することを狙いとしています。
主にHIVの流行を背景にして必要性が認識されたユニバーサル・プリコーションでは、患者の血液や体液をすべて感染性があるとして取り扱いますが、糞便を介した接触感染や空気感染、飛沫感染などにも対応できるように、スタンダード・プリコーションでは尿や便なども加えています。そのため、手袋着用とともに手洗いが重要視されています。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護技術のなぜ?ガイドブック』 (監修)大川美千代/2016年3月刊行/ サイオ出版