注入する栄養剤を人肌(約37~40℃)に温めるのはなぜ?|経管栄養

 

『看護技術のなぜ?ガイドブック』より転載。

 

今回は注入する栄養剤の温度に関するQ&Aです。

 

大川美千代
群馬県立県民健康科学大学看護学部准教授

 

注入する栄養剤を人肌(約37~40℃)に温めるのはなぜ?

栄養剤は、人肌程度に温めて使用することが原則とされています。患者の状態によっては、冷たい栄養剤を注入することで腸管が刺激されて蠕動運動が起こり、下痢を誘発することがあるからです。

 

下痢を起こしやすい患者の場合は、人肌程度の温度に温めてから使用し、投与途中にも湯煎(ゆせん)で温めたり、チューブを保温することを検討しましょう。室温24℃の場合、イリゲーター内に貯留している間やチューブを通過する間に栄養剤が冷めてしまい、1時間後には10℃前後も低くなってしまうからです。

 

ただし、人肌程度に温めておいても、食道より下部の消化管粘膜には温度感覚受容器や味覚受容器が存在しないため、室温程度で十分とする報告もあります。さらに、粉末の経腸栄養剤は滅菌が不能であるため、温めることで細菌が増殖しやすくなるという指摘もあります。実際、使用中のチューブや接続部、イリゲーター内には、細菌が定着しています(1)

 

そのため、栄養剤の加温をせずに室温で投与している医療施設も多くなっています。

 

どの程度の加温が必要なのか、患者の状態を配慮したうえで検討する必要があります。

 


[参考文献]

 

  • (1)塩原真弓ほか:経栄養施行時における経鼻胃管、接続管の再起学的調査、日本看護研究学会雑誌、25(2)、p37~47、2002

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『看護技術のなぜ?ガイドブック』 (監修)大川美千代/2016年3月刊行/ サイオ出版

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