気管切開チューブが抜けた場合の対応は?
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「在宅人工呼吸療法における気管切開チューブ抜去」に関するQ&Aです。
松田千春
東京都医学総合研究所難病ケア看護プロジェクト主任研究員
気管切開チューブが抜けた場合の対応は?
新しい気管切開チューブを安全な療養下で入れ替えるのが最善策です。
しかし、在宅では必ずしも安全な状況を提供できない場合がほとんどですから、対応策について話し合っておく必要があります。
〈目次〉
気管切開チューブ抜去
気管切開チューブ抜去は、ただちに対応しなければ生命に危険が及ぶアクシデントである。体位交換、車椅子や入浴時の移動の際に、何かに引っ張られテンションがかかり、一瞬で抜けてしまう可能性がある。
気管切開チューブ抜去時の対応策について、事前に医師の指示を受け、取り決めておく。
気管切開チューブ抜去時の対応
自発呼吸がある場合は、酸素を気管切開部に当てて医療職に連絡し、応援を待つ。
自発呼吸がない、あるいは弱い場合は、気管切開孔をガーゼなどで押さえてふさぎ、口から蘇生バッグで手動式換気を行う。
ほとんどのHMV療養者は気管切開後2週間以上経過しており、皮膚の孔と気管孔の状態が安定し、気管切開チューブ誤挿入のリスクは低い。加えて、在宅医がそばにいるとは限らず、連絡から到着までに時間を要する可能性もあることから、抜けた気管切開チューブを再挿入することが最善策となる。
気管切開チューブを挿入する場合、カフエアは必ず抜き、抜けた形に沿って挿入する。療養者の状態に異常はないか確認し、医療機関に報告する。医師の到着後、皮膚・粘膜の状況や呼吸状態を確認してもらい、安全な療養下で新しい気管切開チューブに交換するなどの処置を受ける必要がある。
本来、気管切開チューブ抜去の緊急事態を想定して訓練を重ねたほうがよい。しかし、気管切開チューブ抜去を想定した療養者との訓練は困難である。そのため、気管切開チューブモデルなどを用いて、家族、訪問看護師は気管切開チューブの入れ替えの練習をしておくことが望まれる。
日ごろから気管切開チューブ、注射器などの管理方法について確認しておいたほうがよい。
[文献]
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社