在宅人工呼吸療法において停電や災害時の対策として、必要なことは?
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「在宅人工呼吸療法における停電や災害時の対策」に関するQ&Aです。
松田千春
東京都医学総合研究所難病ケア看護プロジェクト主任研究員
停電や災害時の対策として、必要なことは?
停電に備え、医療機器を作動させるためのバッテリーに関する理解と準備が必要です。
原則、人工呼吸器専用のバッテリーを用い、やむを得ず発電機やシガーライターによって作動させる可能性がある場合は、あらかじめ医療機関、医療機器提供会社に確認をとりましょう。
〈目次〉
防災情報の共有
停電や災害時にどう対応するか、医療機関や訪問看護ステーション、介護事業所、行政とともに話し合い、起こりうる災害を確認し、防災情報が共有できるようにしておく(表1、表2)
災害発生時、災害予想時の対応として、安否確認をどうするか、地域における支援者の確保はどうするか、在宅療養が困難となった場合の入院先について確認しておく。
電源の確保
停電直後は在宅で乗り切るためにも、医療機器を作動させるためのバッテリー等の事前準備が必要である(表1、図1)。
HMV開始に伴い、電力会社に連絡し登録しておく。登録した場合、地域限局的な停電や計画的な停電に関する連絡がある。
停電時は人工呼吸器のACコンセントを抜く必要はない。
在宅用人工呼吸器のうち、NPPV・TPPV共有の人工呼吸器は、おおむね内部バッテリーがあり、ほとんどの機種が一定電圧を下回ると自動的にバッテリー駆動に切り替わる。
NPPV専用の人工呼吸器は内部バッテリーがないものがほとんどである。停電時に自動的に切り替わる無停電装置を装備するか、停電時に人が介して外部バッテリーに電源を切り替える必要がある。
人工呼吸器は、先に外部バッテリーを消耗してから内部バッテリーに切り替わるしくみ(つまり、内部バッテリーはいざというときの非常用電源)である。普段から外部バッテリーを人工呼吸器につなげておく。
外部バッテリー、内部バッテリーの駆動時間や充電完了までの時間は人工呼吸器の機種によって異なり、バッテリーの駆動時間や充電完了までのメーカーが提示している時間は、人工呼吸器の設定条件や周囲の環境、バッテリーの寿命(耐用年数)によって異なる。
バッテリーは消耗品であり、経年的に劣化していくことも考慮し、購入から何年経っているか把握することが大事である。
自然災害として、雷に対する対策がある。雷は電圧が強力であり、近くに落雷する状況ではコンセントを抜き、雷がおさまるまでバッテリーで動かすほうが安全である。
発電機の使用に関しては、AC100V出力波形が正弦波であれば充電用として使用が可能と考えられるが、必ず医療機器会社の使用確認をとることが必要である。車からのシガーライターソケットに関しても同様である。
吸引器についても、連続何時間使用可能か、充電完了までに要する時間を確認する(図2)。停電が長引く場合、電力を用いない吸引器を用意しておくことも必要である。
電気の復旧後は、機器が正常に動いているか確認する。
[文献]
- (1)東京都福祉保健局:東京都在宅人工呼吸器使用者災害時支援指針.平成24年3月.
- (2)川口有美子,小長谷百絵編著:在宅人工呼吸器ポケットマニュアル.医歯薬出版,東京,2009.
- (3)川越博美,尾崎章子,数間恵子,他:川村佐和子監修,実践看護技術学習支援テキスト 在宅看護論,日本看護協会出版会,東京,2003.
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社