在宅人工呼吸療法で起こりやすいトラブルは?
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「在宅人工呼吸療法で起こりやすいトラブル」に関するQ&Aです。
松田千春
東京都医学総合研究所難病ケア看護プロジェクト主任研究員
在宅人工呼吸療法で起こりやすいトラブルは?
生じる可能性のあるトラブルについて日ごろから対応策を話し合い、トラブルを「いかに未然に防ぐか」「いかに早急な対応が家族等介護者によって行えるか」「いかに早急に医療職・医療機関の対応に迅速につなげるか」がポイントです。
〈目次〉
在宅人工呼吸器関連トラブルの対応
在宅人工呼吸器関連のトラブル対応法は、原因によって異なる。まずは原因を特定することが重要である。
トラブルが生じたときは、まず、蘇生バッグによる手動式換気に切り替え、トラブルの原因が患者由来か機器由来かを確認し、対応する必要がある。
在宅人工呼吸器のトラブル
人工呼吸器に関連するトラブルは、次の2つに分けられる。
- ①人工呼吸器回路および付属品のトラブル
- ②人工呼吸器本体のトラブル
なかでも、①のうち気管切開チューブ抜去は、ただちに生命を脅かすトラブルとなる。
在宅人工呼吸器回路のトラブルには、回路が車椅子やベッドに巻き込まれたことによる破損、気道内圧チューブが抜ける、などによって人工換気が有効でなくなることなどがある。
人工呼吸器本体のトラブルには、在宅人工呼吸器の作動停止、コンセント外れによる在宅人工呼吸器の電源の消耗などがある。機器トラブルが生じた場合は医療機関、医療機器提供会社に連絡する。
吸引器のトラブル
吸引器に関するトラブルも考えなければならない(表2)。
在宅では、使用している吸引器の作動停止や、吸引力が減少する可能性はある。通常使用する吸引器の他に、充電可能な吸引器や電力を用いない手動式・足踏み式の吸引器も用意し、もしもの場合に備える必要がある。しかし、これらのタイプの吸引器は吸引力が小さかったり、技術的に難しかったりするものがあるため、購入の段階から医療職と十分に相談し用意する必要がある。
日ごろから吸引器の充電がなされているか、押し入れなどにしまいこまれていないかなど、確認が必要である。
HMV療法者に対する吸引は、医療資格をもたない介護職で一定の研修を受けて知識・技術を習得した者が実施できることになった。吸引器材の管理不十分や不適切な吸引手技によってヒヤリハットが起きた例も報告されており、吸引に関するトラブルが生じないための医療職との連携が必要である。
[文献]
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社