在宅人工呼吸って、なに?

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は「在宅人工呼吸」に関するQ&Aです。

 

原口道子
東京都医学総合研究所難病ケア看護プロジェクト主任研究員

 

在宅人工呼吸って、なに?

 

長期にわたって持続的に人工呼吸に依存せざるを得ず、かつ、安定した病状にあるものについて、在宅において実施する人工呼吸療法を在宅人工呼吸といいます。

 

〈目次〉

 

HMVの始まり

HMV(在宅人工呼吸療法)は、1940年代後半から1950年代前半にかけて、欧米におけるポリオの大流行を契機とした多数の呼吸筋麻痺後遺症患者に対する社会的要請として開始された

 

わが国のHMVは、1970年代に神経難病患者に対する実践により始まった。その後、1990年に在宅人工呼吸管理指導料の保険適用および1994年の増額改定によって、急速に普及してきている, 図1)。

 

図1在宅人工呼吸症例数の変遷

 

石原英樹,坂谷光則,井上義一,他:在宅呼吸ケアの現状と課題-平成19年度全国アンケート調査結果-.労働科学研究費補助金難治性疾患克服事業呼吸不全に関する調査研究班平成19年度研究報告書2007:60-63.より引用

 

現在の主流は在宅NPPV

人工呼吸療法は、陽圧式人工呼吸療法と陰圧式人工呼吸療法に分類される(『人工呼吸器にはどんな種類がある?どのように使い分けるの?』)。

 

HMVには、現在主流である陽圧式人工呼吸療法の方法として、気管切開を介して換気補助をするTPPV(気管切開下陽圧換気)と、マスクピース・マスクや口鼻マスクを介して換気補助をする、NPPV(非侵襲的陽圧換気、NIVともいう)がある。

 

2007年の全国調査によると、在宅人工呼吸療養者数は16,200例である。このうち、在宅NPPVは14,000例とHMVの80%超を占め、在宅TPPVは2,200例と推計されている。在宅NPPVは近年急速に普及し、保険適用となった1998年には、すでに在宅TPPV療養者数を上回った。

 

HMVの普及に伴い、安全性を確保するための在宅医療環境整備が重要な課題となっており、療養者および家族介護者の安定的な療養生活維持・継続を支える体制づくりが期待されている。

 

略語

 

  • HMV(home mechanical ventilation):在宅人工呼吸療法
  • 気管切開下TPPV(tracheostomy-positive pressure ventilation):気管切開下陽圧換気
  • NPPV(non-invasive positive pressure ventilation):非侵襲的陽圧換気
  • NIV(non-invasive ventilation):非侵襲的換気療法

[文献]

  • (1)石原英樹:在宅人工呼吸療法(HMV).呼吸ケア2009;7(7):97-98.
  • (2)石原英樹,坂谷光則,井上義一,他:在宅呼吸ケアの現状と課題−平成19年度全国アンケート調査結果−.労働科学研究費補助金難治性疾患克服事業呼吸不全に関する調査研究班平成19年度研究報告書2007:60-63.
  • (3)宍戸克子:在宅人工呼吸療法.呼吸ケア 2009;夏季増刊:247-256.
  • (4)木村謙太郎:在宅酸素療法.在宅人工呼吸療法導入背景と現状、実際.在宅呼吸療法事業ハンドブック2003,アズクルー,大阪,2002.
  • (5)中山優季:在宅人工呼吸ケア.道又元裕編,人工呼吸ケア「なぜ・何」大百科,照林社,東京,2005:457.
  • (6)中山優季:在宅人工呼吸療法の実際.道又元裕,小谷透,神津玲編,人工呼吸管理実践ガイド,照林社,東京,2009:292-302.
  • (7)原口道子:在宅での看護職員と介護職員等との連携のポイント.コミュニティケア2012;14(12):53-57.

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

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