大建中湯は飲み続けたほうがいいの?

『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は「大建中湯の服用」に関するQ&Aです。

 

佐々木剛
大阪市立総合医療センター薬剤部担当係長
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長

 

大建中湯は飲み続けたほうがいいの?

 

大建中湯の服用によって入院期間の短縮などの効果があるとの報告があります。

 

〈目次〉

 

大建中湯とは?

大建中湯(だいけんちゅうとう)は、乾姜(カンキョウ)、山椒(サンショウ)、人参(ニンジン)、膠飴(コウイ)を配合した生薬で、効能としては、腹部が冷えて痛み、腹部膨満感のあるものとなっています。

 

特徴としては、腸管通過障害に伴う腹痛、腹部膨満感改善、腸管運動亢進作用、腸管(小腸、大腸)血流量増加作用などがあることから、術後のイレウス防止などに投与されます(表1)。

 

表1大建中湯の配合生薬とその薬効・薬理

大建中湯の配合生薬とその薬効・薬理

 

術後における大建中湯の効能

大建中湯は、術後早期に服用することによって、術後入院日数の短縮効果が認められています。

 

慶應義塾大学病院外科の報告では、大腸がん手術の比較検討において、開腹手術で大建中湯投与群(のち投与群)で15.2±5.6日、大建中湯非投与群(のち非投与群)で17.3±6.0日で1.9日の短縮、腹腔鏡手術で投与群10.6±5.5日、非投与群で14.9±7.3日で4.3日の短縮が認められ、両群合計で3.5日の入院期間の短縮が見られたとあります(2)。

 

また、大建中湯の投与によって、術後の排ガスまでに要した日数は投与群で1.91±0.66日、非投与群で3.17±1.62日、飲水開始日までの日数が、投与群1.31±0.68日、非投与群で3.64±1.42日、食事開始日でも投与群が5.46±1.38日、非投与群で6.92±2.71日とどの項目においても有効だとの報告があります(3)。

 

また他に抗炎症作用や、肝切除後の高アンモニア血症改善効果、門脈血流改善も認められています。

 

大建中湯はどのように服用する?

大建中湯の投与期間については、開始時期はできるだけ早く行う(飲水開始時期や、術後1~2日後あたりから開始することが多い)ほうがよく、終了時期については、症状が改善するまで服用し、漫然と服用するのでなく、症状により、継続の可否を判断します。

 

通常用量が1回2包ということもあり、飲みにくいときは、水やお湯に溶いて服用すると飲みやすいです。腹部を温めるという意味でも大建中湯は温めて飲むと効果的です。

 

漢方薬は一般的に食前(食事30分以上前)または食間に内服するのが通説とされていますが、具体的な理由は、

 

  1. 空腹時のほうが有効成分の吸収がよい
  2. 食事の後に飲むのに比べて、食べ物の影響を受けにくい
  3. 飲む量が多いため、満腹では飲みにくい
  4. 食物や他薬との相互作用の回避

などがあります。

 

重要なことは、忘れず服用することです。患者が忘れずに飲みやすい時間に合わせるのがよいでしょう。

 

コラム消化管術後に使用される漢方薬(4)

六君子湯(りっくんしとう) は、食欲亢進ホルモンであるグレ リンの分泌促進作用、グレリンシグナル増強 作用、消化管運動促進作用などを有する漢方 薬です。上部消化管術後の食欲不振、部不 快感といった消化管機能異常に効果があり、 早期経口摂取を促す目的で使用されます。 名前の由来は、「君子危うきに近寄らず」 といわれるように「君子」は人格者の意味であり、消化器系にはたらく重要な6つの生薬 が配合されていることで「六君子湯」の名が付いたとされています。

 


[文献]

  • (1)三浦典正:漢方薬は食前に飲むのがいいか、食後 に飲むのがいいか?.漢方診療に役立つQ&A, 治療 2009;91:1785-1786.
  • (2)今津嘉宏:外科手術後早期における大建中湯の有 用性「漢方医の立場から-術後入院日数の短縮と 副作用対策」.第5 回 日本消化管学会総会学術集 会.
  • (3)山本雅浩:外科手術後早期における大建中湯の有 用性「大建中湯の下部消化管における薬理作用機 序について」.第5 回 日本消化管学会総会学術集 会.
  • (4)河野透執筆,北島政樹,兼松隆之,田中雅夫 監修:EBM に基づく外科領域の漢方の使い方 第2版.ライフ・サイエンス,東京,2009.

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社

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